誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

6年ぶりの卒業式

3月20日は、本務校の卒業式。前々任校でゼミ生を送り出したのが2015年の3月、前任校では文科省の補助事業推進のための特任教員であったのでゼミを持っていなかった。つまり、6年ぶりにゼミ生を送りだすことになった。
現在所属する学部に新設とともに着任。つまり1期生。学部として初めての卒業生である。
新しい学部。教員も、職員も、そして学生たちも一緒に学部を作り上げてきたような感じ。そして、「教える→学ぶ」の関係ではなく、お互いに、ともに学び合いながら今年、完成年度を迎えた。
この4年間を、「超私的」に振り返ってみたい。
 
2017年度
新設された京都産業大学現代社会学部に着任。教員生活としては3校目の勤務先となる。
これまで、「まちづくりが専門」として、学生たちとともに地域に入り、「地域から学ぶ」というスタンスで学生と、そして地域と接してきた。そのことから、「大学地域連携」の仕事が増え、前々任校では、大学が立地する京都府北部・兵庫県北部、そして前任校では、文科省の「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」の特任教員として対象とする地域である宇治市京都市伏見区を中心に、京都府南部のを駆け回った。
そういった思い入れや自負もあり、新天地でも「地域」にこだわった研究・教育・社会貢献をしていこうと思った。
新学部なので、全員が1回生、当然ゼミはまだ始まっていないので、ボチボチやろうと思っていたところ、大学の立地する近くの上賀茂学区が、大学と連携して「学区ビジョン」作るので、学生と一緒に手伝ってほしいという依頼を受け、地域のことを知るために町歩きをしたり、学区の人たちとワークショップを行ったり、ニュースレターを全戸配布したり、コミュニティラジオに出演して告知をしたりと、学区をくまなく駆け回った。おかげで学区内の道やどんなところなのかといったことが頭に入り、地域のイメージが明確になった。
エピソードとしては、最初の顔合わせで、大学院時代に知り合った元市職員の方との再会、夏祭りでの学生たちによるアンケート調査の最中で夕立に見舞われたことなど。でも、プロジェクトは継続することなく終了してしまった。
また、秋以降は、他学部の綾部市での合宿に学部学生も参加させてもらい、ゼミの宣伝ができたことがある。参加者のうち1名はゼミに参加してくれたし、上賀茂学区のプロジェクトで一緒に活動した学生もゼミに来てくれることになった。
 
2018年度
いよいよゼミスタート。フィールドは綾部市を中心とする京都府北部地域(とはいうものの活動エリアはほとんど綾部市内)。この年は水源の里老富がメインのフィールドとなった。綾部の「水源の里」の取り組みは前々任校時代に、前市長から話を伺っていたが、これらの集落が多く存在する、市東部の上林地区には行ったことがなかった(車を持ち出したのが任期後半になってからだったということもあり)。いわば初めての上林。しかも老富は市街地から35kmほど離れた最も遠い集落。最初に出向いた時、駅からタクシーを利用したら1万円を越えてしまい驚いた。
それでも、この頃から有名になったシャガの群生の際には集落の人たちが名物の栃もちでもてなしてくれたり、お土産品を並べたりと、集落をアピールするために努力されていることを知った。とりわけ、シャガの群生がある、森の中は常にきれいに整備され、荒れた道は全くない。この年の7月に起こった豪雨災害で崩れた山道を、ゼミの学生たちも混じり、集落の人、市職員とで直した。
8月にはインターゼミ。地域をフィールドとする4つの大学のゼミの合同合宿にこの年から合流。山形県庄内の美しい自然のなかで、学生たち、そして担当教員とが熱い学び合いを繰り広げた。
9月には初のゼミ合宿。インタビューをし、集落を歩き、地域の資源、課題について議論した。また農家民宿に泊まる体験もできた。
10月には、綾部市里山交流研修センターが、本務校の綾部における交流拠点に位置づけられ、その開所式に参加。学生たちは来賓の前で見事に発表を行った。
その後も、しばしば老富の集落を訪れ、調査。年度末には集落の紹介冊子を完成させた。
 
2019年度
2期生4人が入ってきた。人数としては少々寂しかったが、8月のインターゼミでは「ホーム」の綾部・福知山ということもあり、福知山公立大学とともにホスト校としての責務を果たせたこと、そしてゼミ生たちが見違えるような成長を見せたことが印象に残った。
この年に入った綾部市内の集落は水源の里・古屋。集落の人口がわずか4人(当時)、高齢化率100%という府内最小の集落だが、集落の人は元気である。村用や特産の栃の実拾いには、都市部から多くの人がボランティアで駆けつけ、地域住民と協働することで集落が維持されているというところである。
学生たちと初めて訪れた9月頃、この集落も試練の中にあったが、取材を続ける中で、学生たちの方から通ってさらに取材を続けたいという申し出があり、結局集落紹介冊子を作成するのに5回ほど訪れたのではないだろうか。
また、秋には地元高校生と「10年後の綾部を考える」というワークショップを行った。学生たちがテーブルファシリテーターとして、高校生たちと対話を行った。だが、そこで得られた感想はかなりシビアで、「表面的な意見しか出なかった」というものであった。その心は、「高校生たちが地元のことを知らず、興味もない。それが故に、高校を卒業した後、地元を離れたいと思う人が多い」という実情に大きなショックを受けていたということである。このことは、学生たちにとって、綾部を考える上で大きな問題意識として認識されることとなり、それがのちの研究発表や卒論につながるのである。
 
2020年度
2月頃から始まった、新型コロナウイルスの感染拡大は、この年のゼミ活動(というよりも大学生活そのもの)を大きく変えることとなった。
卒業式も入学式も中止となり、春学期は授業も全てオンラインに切り替えられた。ゼミも例外でなくオンラインとなり、zoomやteams、discordといったツールを使い、授業やゼミ、会議を行うこととなった。
新ゼミ生は、10人を数え、これまでにない人数の加入に期待も膨らんだが、結局春学期いっぱい、実際に会うことはできず、オンラインでのゼミ活動を重ねることになった。当然、フィールドワークも不可能となり、春学期、そして夏季休暇中のフィールドワークは全て中止となった。したがって、夏合宿もなく、恒例のインターゼミもオンラインで行うということになった。
対面でのゼミが始まったのは秋学期。例年ならば、合宿を経験して成長した姿を見ることができるのだが、10月も間近に迫った頃、ゼミ生同士が「初対面」となったのである。
フィールドワークが再開できたのは、10月の終わり。また2回生が行う集落紹介冊子作成のためのフィールドワークは11月も終わりになっていた。この年は水源の里・清水と橋上の里を担当することになったが、結局学生たちが足を運べたのは1〜2回に過ぎない。
それでも、3回生は昨年度の調査の結果を振り返り、大学コンソーシアム京都「京都から発信する政策研究交流大会」での研究発表を行い、4回生はそれぞれの関心や問題意識をもとに卒論や卒業研究を行った。
今年度は、確かにフィールドに出ることについては大きな制約が課せられたが、「深く考える、省察する」時間が与えられたのだろう。フィールドワークの基本を学ぶべき2回生にとっては気の毒であったが、上回生にとっては、こうしたプラスに働いた面もある。
 
以上、2017年に学部が新設されるとともに着任し、その年に入学した1期生の卒業を以て、完成年度を迎えるのであるが、「地域での学び・地域からの学び」の意味と面白さを学生たちに伝えられたであろうか。また、「地域での学び・地域からの学び」が彼らに何をもたらしたであろうか。検証はこれからである。
 
さて、2021年度の幕開けが間近に迫った。2020年同様、コロナ禍による様々な制約からは逃れられないと思うが、それでもこの1年の経験によって、「新たな生活様式」ならぬ「新たな学びや活動」への適応もできるようになった。
実は、年度明けから始めたい活動が満載である。新年度が待ち遠しい。