誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

夏まつり雑感

うちのゼミと同じ学部のゼミとが共同で地域の夏まつりに出店した。

きっかけは、地域の「おやじの会」に参加されている同じ大学の先生からのお声掛け。それと一昨年、地域のビジョン作成にあたり、1期生の学生有志がこの夏まつりで来場者にインタビューをしたり、地域でワークショップを開くなどして、地域の方々、行政、そして大学とが協働で取り組んだご縁である。

6月ごろから有志メンバーが昼休みに集まり準備開始。まずは何を出店するかを決める。その中から出てきたのが「小籠包」。一緒に取り組んでくれることになったゼミに中国からの留学生がいるという。また学部のコンセプトとしても「異文化・多様性」を謳うのもありなのではないか、ということでまず小籠包が決定。もう一つ何にしようかと悩んでいた時に、ある先生から「京都の飲み物として冷やしあめはどうか?」という提案をいただいたので、そちらも採用することになった。結局、人数の少ないうちのゼミで冷やしあめ、留学生も在籍するもう一つのゼミで小籠包を担当することになった。

夏まつりに向けての地域の会議には、予定の合う学生を連れて参加。地域の人たちとの顔合わせと、出店物を何にするか、またそれまでの手続き、準備することについて確認し、準備を進めてきた。

 

いよいよ夏まつり前日。試験期間中にもかかわらず、多くの学生が集まって、店の看板作り、両替、そして現地での設営手伝いと分担し、いよいよ当日を待つ。とりわけ、設営は猛暑の中での作業。熱中症にならないよう気を配りながら作業をしてもらう。

 

当日。自分自身は什器を取りに行ったり、備品を運ぶためにカーシェアを使って時間までに会場まで運び込み。15時を過ぎると学生たちがやってきた。

準備は比較的スムーズに進む。小籠包は蒸し器に水を張り、湯を沸かして湯気が上がる蒸し器に冷凍の小籠包を入れて8分程度蒸す。冷やしあめは原液と水、氷を混ぜるだけ。開店時間の16時半にも余裕で間に合った。

出だしは小籠包、冷やしあめともぼちぼちのペースであったが、次第に小籠包の売り上げか上がってくる。一方の冷やしあめはぼちぼちのままである。

小籠包は予定していた100食が底をついてきたので、追加注文をしてきた。また売る人、作る人、お金を受け取る人の連携も見事である。途中、客数に蒸し時間が追いつかなくなってきた、行列ができたり、「整理券」を配るなどして対応しなければならなくなったが、追加した分を含めておよそ140食を売り切った。

一方の冷やしあめは30杯余り。予定していた100食には遠く及ばなかったが、原液の開栓を様子を見ながらやっていたので、在庫は学園祭等に回せる。「ナマモノ」ではなく「水モノ」の強みではあるが、「完売」と「売れ残り」ではモチベーションに差が出たのはやむを得ない。

20時を過ぎると花火、そして盆踊りが始まったので、冷やしあめの方も閉店することにした。

こうして終了時刻の21時となり、解散した。

私はその後、帰ろうとすると地域の人たちがゴミを仕分けしていたので、手伝う。こういうお祭りでは分別していてもゴミが混入してしまうので、仕分け作業が発生するのだが、汚れた容器を洗浄し、市指定ゴミ袋に入れなおすという作業はかなり大変で、全て仕分け終えることはできず、残りは翌日の撤収作業日に行うことになった。

 

気づいた点は以下の通り。

「何を売るか」は非常に大事

夏まつりの「定番」と言えば、焼きそばやフランクフルトなど。定番は確かに売れるが、競争も激しい。「小籠包」はそういう意味では目新しいチョイスだった。また隣の店では生ビールを売っていたせいか、大変よく売れ、途中で追加したほど。それでも19時過ぎには完売した。一方の冷やしあめは苦戦。子供たちが時々買ってくれて「おいしい」という声も聞こえたが、大人はビール、そして子供やアルコールを飲まない人たちは缶やペットボトルの飲料をすでに持っていたこともあり、売れ行きは芳しくなかった。そして何よりも「冷やしあめ」を知らない人が増えていることもある。かつて京都では夏になると冷やしあめを売る店がたくさんあったが、確かに今はあまり見かけない。今回も原液を購入するために市内のスーパーを見て回ったがあまりおいておらず、あったとしても目立たないところに数本だけ売られている感じであった。そこで結局通販で取り寄せたのである。もっとも、冷やしあめは原液を水と氷で割って作るので、開封していないものについては使い回しが可能。これを全部開封していたら大赤字になるところであった。

とりわけうちのゼミは7月に綾部で出店した際も完売には届かなかったので、その辺りのマーケティングセンスは磨いた方が良いのかもしれない。

 

「どう売るか」も大事

小籠包の方は学生が皆、元気が良かった。隣の「ビールと合わせてどうですか?」と呼びかけたり、「本場の」といったセールストークが冴えていた。一方の冷やしあめは「どういうものか」という説明から入らなければならなかったし、ちょっとおとなしかったか。

 

「共同」の難しさ

「2ゼミ共同」の相乗効果はあまり出なかった。「小籠包」と「冷やしあめ」がそれぞれ「別の店」のような感じになってしまった。結局「完売」で意気揚々の小籠包担当学生を横目に残った冷やしあめを片付ける学生は少し気の毒だった。小さいようだが、実は大きな課題。

 

ゴミの問題

途中、持ち回りでゴミの仕分けを行なった。ゴミ箱は「燃えるゴミ」「空き缶、空き瓶、ペットボトル」「プラスチックゴミ」と分けられていたが、どうしても「混入」してしまい、その仕分けをしなければならなかった。

また、バックヤードでは地域の方々が、集まったゴミをもう一度出し、空き缶を潰し、プラスチックゴミを洗って京都市指定ゴミ袋に入れなおす、という作業を行なっていた。私も夏まつり終了後、小1時間程手伝ったが、その手間は想像以上。とりわけ「プラスチックゴミ問題」がクローズアップされる中、「洗って分ければいい」という視点から「減らす」という視点に変える必要があると感じた。例えば、「リユース食器」の導入。京都市では各行政区の「ふれあいひろば」等ではほぼ100%導入されているし、近年では祇園祭の屋台でもリユース食器を使ってのサービスが実現した。それよりも小規模の地域のお祭りでできないわけがない。

方法としてはこんな形はどうだろう?

・出店料を値上げする代わりに各出店者が各自で容器の購入をしなくて良いようにする

・ゴミ箱とリユース食器の回収ステーションを設置し、持ち回りの「ゴミ当番」の人員を増やす

・終了後に家庭科室等を使って汚れた食器を洗う。もしくはもう少しコストをかけて良いのならば、洗浄もリユース食器サプライヤーにお願いする。

こうすることで、「ゴミを洗って、再度分けて、捨てる」という効率面、環境負荷面、そして当事者の「気分の面」での改善は図れるかもしれない。ゴミ処理の手間、コストからは大幅に解放されるだろう。そして、地域にイノベーションを生むのだ。

 

夏まつりの「賑わい」をどう見るか

一昨年も感じたことだが、地域のお祭りにこれだけの人がやってくることは驚きである。一方で、祭りを運営する側の人数は限られている。もちろん、学区外からの来場者も一定数いるはずだが、それにしても多くの人たちで賑わっていた。

「賑わっている」ことは大いに結構なことなのだが、裏を返せば地域に住む多くの人たちが「お客さん」の立場であり、地域に関わっていないということなのである。地域の方からも「これだけの人がいるのに町内会に入っている人はわずか」という話を伺った。確かに「町内会加入は義務ではない」が、地域住民内の「当事者とお客さん」という関係はなんとかならないだろうかと感じた。残飯が入ったまま捨てられたり、十分に仕分けもされず捨てられるゴミの問題もこの辺りにあるのかもしれない。

 

ところで、うちのゼミはフィールドワークをして、そこから課題発見、課題解決まで考え、実践する集団である。冷やしあめが売れなかったのは残念なことであるが、それよりも店を出して、どんな課題を発見したか、それに対して、どんな課題解決策を考えられるか、の方が大事。「売れてバンザイ、売れなくてしょげる」(もちろん「売れなかったのは何が問題なのか」を考え、解決策を出すことも大事だが)だけでなく、出店して何を発見したのか、どんな疑問を持ったのか、そちらを考えてもらいたい。

 

とにかく、2日間、猛暑の中での出店、お疲れ様でした。