誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

2018年10月28日 綾むすび館開所式・綾むすびわざ講座

2018年10月28日、勤務校の京都産業大学が包括連携協定を結んでいる京都府綾部市において、「綾むすび館」の開所式、ならびに「綾むすびわざ講座」が執り行われた。

ゼミ生と私は前日に綾部入り。京都産業大学の綾部における交流拠点「綾むすび館」に位置付けられる綾部市里山交流研修センターで1泊。そこで、学生たちは、当日のプレゼン資料を完成させた。

朝10時、開所式開会。大城学長挨拶、山崎綾部市長の挨拶、ほか来賓の挨拶が続き、いよいよ学生たちのゼミ活動紹介の番。6名の学生のうち3名が、主に「綾むすび館」の活用アイデアとして、1「施設活用」としてピザ窯や畑の活用のアイデア、2「交流」として、地元の小中高生との交流や課題共有やワークショップの実施、そして「記録」として活動成果を冊子やパネル等記録を残し、地域で活用できるようにする、と言ったことを提案した。キャッチフレーズとしては「綾部と学生とをむすぶ」とした。

開所式後、庭で看板掛けと記念撮影。好天の中、絶好の開所式となった。

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その後、午後の「綾むすびわざ講座」のため、綾部駅北にある綾部市ものづくり交流館に移動。昼食のためまちなかへ。

合宿の時にお昼をいただいたお店が「大人数の場合は要予約」とのことであったので、西町商店街から市役所に繋がる道にあるお寿司屋さんへ。急な大人数対応でご迷惑をお掛けしたが、対応してくださった。お店では前々職時代にお世話になった事務職員さんと偶然再会。

会場に戻り、プレゼン準備。

13時半開会。大城学長、山崎綾部市長の挨拶の後、山田啓二教授(前京都府知事)の講演「海のない海の京都から」が始まる。その要点を記しておく。

地域活性化のために(1)働く人を増やす、(2)(定住人口に代わる存在としての)交流人口、(3)IoT、AIの活用によるスマート化、(4)共生社会

・京都のメリット:(1)多彩な文化、(2)大学生の存在、(3)伝統から先端まで多彩な産業、(4)高付加価値の農産物

・京都のデメリット:(1)南北に長いが国土軸(東西)は狭い、(2)(特に南北間の)アクセスが悪い、(3)京都市一極集中、(4)広大な土地が少ない

・こうしたメリット、デメリットから発展のためのビジョンとして、(1)アクセスの改善、(2)高付加価値型産業、(3)文化、歴史、自然を生かした産業、(4)地域の個性化・ブランド化→南北軸と「十次産業」の確立によって人口減を補う(注:「十次産業」=6次産業+文化)→世界交流首都京都へ

京都府には京都市付近にある東西軸のほか「もう一つ」東西軸がある。それが綾部である。綾部で京都縦貫道と舞鶴若狭自動車道が交差する。この「交流軸」としての綾部をどう活かすか?大交流時代における北部での狙いである。

・産業はどうか。地域経済循環図上は「圏外流出」である。綾部の産業で強いのが(1)電機・機械、(2)食料品、逆に弱いのが卸、サービス、運輸である。農業はどちらかというと「弱い」。流出傾向である。すなわち綾部は「工業地域」と言える。

・強みを伸ばし、弱みを解消するためにどうすれば良いか。(1)二次産業の発展→ここ「北部産業創造センター」という新拠点の整備、(2)豊かな自然を生かす→農林水産業の新展開、その上に立った交流の創出(観光、地方・都市交流)。

・農業にはどのようなものがあるか。(1)米、(2)生乳、(3)野菜、(4)卵、(5)肉牛、(6)茶、(7)果樹(クリ)がある。しかし担い手の問題がある。

・観光はどうか。観光には、ブランド力、拠点、特産品、宿泊施設がいる。綾部を見てみると、平日に訪れる人が多く、休日は減る。すなわち「出張族」の移動が多いことがわかる。「産業地域」なのである。

・そこで広域観光時代のブランドとして現職時代「海・森・お茶の京都」いわゆる「もう一つの京都」である。綾部を見てみると、観光客は増えたが宿泊は少ない。しかし、かつては1泊が多かったが、2~3泊する人が増え、若い人も増えてきた。

まとめ

1 産業の共生→工業出荷額は北陸よりも優位にある

2 地域の共生

3 交流のまち・綾部 新しいコミュニティマネジメント。地域の人たちに混じり、たくさんのボランティアがやってくる古屋の可能性。

山田教授と山崎市長のミニシンポ

山崎 綾部の市民性として、ものづくりを一生懸命、額に汗して働き、お金を使うのは外、ということがある。それゆえ、自分たちのまちで人をもてなす、という意識がこれまであまりなかった。バス駐車場、お茶の飲める場所、お土産を帰る場所がなかったことで整備したのがグンゼスクエアである。

山田 綾部の特徴は「どこへでもいける(アクセスの良い)地域」である。そんな場所が発展しないわけはない。グンゼスクエアも「海の京都の道の駅」としても良いくらい。海のものと工業製品は売りになる。だが、課題として観光と物流が弱い。

交流のハブとしての綾部と考えると、物流拠点があるといい。中国の義鳥市(ぎゆう。浙江省)があるが、ここは中国中から物を買う人があふれるまち。綾部も「綾部ならではのものと物流」で、日本海側の義鳥になれる。

地方創生について

転入者もいるが転出者もいる。また自然減の中で成功の鍵は?

山崎 一つめは交通の要衝としての企業立地と産業開発、もう一つは田園回帰の動きである。

山田 自分のところの美味しいものを自分のところでやっていける。綾部の郷土料理の店が出てくれば。

山田 価値観の違いがある。地方の人は東京的な暮らしを求める。東京の人は地方的な暮らしに憧れる。

綾部は工業的にはいいまち。カルビーや京セラといった大企業がくるまちは少ない。鉄道、高速道路、港湾。うまく生かしていけば魅力は出せる。

地域人材をどう育てる?

山崎 地域にとって大切なのは人材である。特に綾部は「小さなリーダー」「地域のリーダー」がいて、地域で一歩踏み出して頑張っている。綾部は1町11村の合併という昭和の大合併の経緯もあり、1つ1つの村に「小さな拠点」がある。それが現在はギリギリまだ機能している。それをどう残すか。その「村意識」が郷土愛につながっている。だから弱っているが、頑張っている。それが地域リーダー。

人が減っていくと心まで萎えるがその一歩手前で踏ん張っている。

コンパクトシティ」についての議論があるが、綾部は旧村単位の「クラスター」を大切にしたい。

山田 「この人はこれだけ、ここまで」というのでは難しい。半公半民でよい。現職時代、里の仕掛け人、公共員という制度を作ったが、一定の権限を与えることが重要。日本では消防団など、普段は地域の住民がいざという時は危険を押して消火に当たる。これは日本の良さ。公、民と分けるのではないコミュニティのマネジメントが求められる。

山崎 綾部ではシステムにはなっていないが、地域のコミュニティが機能している面がある。一人が地域で何役もしながらコミュニティを維持している。

だが、少子高齢化で弱ってきているのは事実。制度的にどうするか。若い人にも入ってきてもらう必要。

山田 制度にすると若い人が入ってきやすくなる。「役割」であることが必要。

大学が地域に果たす役割とは

山田 現実はこう動いているということが理解できない人が多い。若い人には生き方を教えるようにしたい。

地域に入ると、地域の人の思い、暮らし方がわかる。

山崎 若者とシニアとのギャップはいつの時代にもある。きめ細かな指示をきちっとするとちゃんとする。マネジメント必要。

近年の学生は真面目。「地域に貢献したい」なんて尊敬の念を抱く。

綾部の皆様へ

山崎 人口減少を食い止めるには

毎年500人が亡くなり、200人が生まれている。300人の自然減、社会増はプラスだが、毎年18歳が出ていく。

多くの人が戻りたい、と思えるように

(1)医職住の充実、(2)教育、情報発信を行なっていく。

有効求人倍率も今やプラスで人不足である。

山田 綾部は田舎、都会のいいとこ取りの「トナカ」。京都まで1時間でいける。逆転の発想を。

知事や市長ができることはわずか。皆さんにもがんばってほしい。

我々ができるのは、頑張れる環境を作ること。

地域的、環境的に綾部は「伸びるところ」だ。

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この後、ゼミ生たちが、これまでの活動が異様、綾部の魅力、気になるところ、そして綾部でしていきたいことについて発表した。

綾部のいいところとして、以下の点を挙げた。

・高齢者が元気

・地元愛

・欲張らない性格

また、今後の展開として、午前中の「綾むすび館」開所式でも話したような内容について披露した。

最初は緊張気味であったが、堂々と話してくれた。

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結局時間がなく、私の出番はなかったが、もし時間があれば、次のようなことを話そうかと思っていた。

・(山田教授の「交流・共生」と関連づけて)地の人、移住者、都市との交流、学生の存在、その中で出会いや変容を通じてお互いが共生できる環境が作れれば。

・(山崎市長の「田園回帰」と関連づけて)いまや「いい大学、いい会社」に入ることがゴールではなくなっている。自分の価値観や新しい生き方を求めることができるのが綾部。

・取り組んでいきたいのは「交流」から、お互いが「学びあう」環境を作ること。

・(学生からの提案があった「記録」について)地域の人が何をしてきた、どう生きてきた、どのような思いでいたか、といったことを記録として残すことにより、それを後世に伝え、将来の地域づくりに繋げられる。

まあ、これらは、これから取り組んでいくこと。我々の態度で示していこう。

予定の15時半を少し回ったが、「綾むすびわざ講座」はこうして幕を閉じた。

私たちにとってはこれがキックオフである。地域と良い関係を作りながら、お互いに「学びあえる」関係、環境を作りながら、地域の人と協働して、新たに「コトを起こして行く」。これが我々のテーマである。

<11月3日追記>

講座終了後、綾部に住んでいる大学時代の先輩が、来てくださっていた。5年ぶりぐらいの再開。嬉しかった。

あやべ市民新聞にも今日の様子を掲載していただいたようだ。

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