誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

2022年元日新聞比べ読み

遅ればせながら、今年も元日の新聞を読み比べました。

ただ、元日付産経新聞だけが手に入らなかったので、ネット記事も引用しながらの講評になるのと、昨年から購読し始めたローカル紙『あやべ市民新聞』を加えて、2022年の元日新聞比べ読み!

 

朝日新聞

新年の連載記事は「未来のデザイン」。1日付はDREAMS COME TRUEと「未来予想図」。連載の意図として、「コロナ禍の2年間は、先の見えない不安に誰もが慄いた時間でもあった。未来はこれまでの延長線上にはないかもしれない。だからこそ探りたい。より良い未来、そのすがたを」とある。続きの2面に目を移すと、西粟倉村の「百年の森林構想」を皮切りに、過去の感染症の流行が歴史を変えてきたこと、そして未来人の立場に立って現役世代が何をすべきかという「フューチャーデザイン」という取り組みが生まれているという紹介につながる。1日付の記事では「未来の社会をデザインしていくのは、私たち自身だ」とあるが、現代人はどうしても「今」だけに目が行きがちで、過去から学ぶことも、未来を想像することもなかなかできない。私たちはどうするべきか。

あと、社会面の「住まいのかたち」は個人的に興味あり。

 

読売新聞

元日お馴染みの3面の半分以上を使う社説がどうしても目に入ってしまう。タイトルは「災厄越えの一歩を踏み出そう」。金融資本主義の行き詰まり、中国の軍事大国化、そしてコロナ禍という、日本を取り巻く大きな変化、試練の中、「給付から雇用へ」「イノベーション」「緊張高まるアジアの最前線に立つ日本」という課題に立ち向かわなければならない。だから参院選で「政権与党頑張れ」という結論へと結びつく。問題認識は正しいのだが、論調が昭和。そして毎年のことだが、大言壮語なんだよなあ。

あと、5面の安倍元首相のロングインタビュー。「読売大好き安倍さん」だからこそのロングインタビューというのは勘ぐりすぎ?

 

毎日新聞 

トップが「ヤフコメ 露が改ざん工作」。ロシアの政府系メディアがヤフーニュースの読者コメント欄をロシア語に翻訳する際に、元の投稿文章を改ざん、加筆した疑いがあるという内容。毎日の元日付は時折、他紙が目をつけなかった記事を入れてくることがある。

社説は「民主主義と市民社会 つなぎ合う力が試される」というテーマ。安倍菅両政権下で異論を排除する動きが強まり、国民の分断が強まったという問題意識から、対話と参加という、本来の民主政治とそれを補完する市民参加の重要性を改めて問うている。

面白かったのは京都と滋賀の対決いろいろ(雑煮とかソウルフードとか駅名とか歌とか)。

 

産経新聞

冒頭でも述べたとおり、元日付のものが手に入らなかったので、3日付のものも参照にしつつ。

新年の連載記事「

www.sankei.com

」が少し気になる(ネット版は有料記事)。

1日付がAI、3日付がウイルスについて書かれている。2030年という「近未来」に向けて、文明史的な考察は興味深いが、タイトルの「主権回復」というのが少々仰々しい(3日記事ではパンデミックと私権の制限、そして憲法改正について言及があった)。

また、3日付の産経抄は1日に亡くなった池明観(チ・ミョングヮン)氏をしのぶ内容。そのスタンスはさておき、産経の韓国ウォッチはなかなか面白いことがある。ただ、3月の大統領選を控え、他国の与党の政策や姿勢をくさすのはどうかなあ。

 

京都新聞

昨年から続く連載「つなぐOurVoices 性を考える」は、「均等法『第一世代』」。男女雇用機会均等法施行直後に入社した女性社員が、様々な苦労を重ねながら現在があることが綴られている。1986年に男女雇用機会均等法が施行された頃はまさにバブル時代。「24時間戦う」ことが美徳とされた時代に社会人となり、社会でも企業でも「男尊女卑」の風潮がまだまだ根強かった当時、「次世代のために」と踏ん張り、今があることが綴られている。

21、22面では、「戦後のジェンダーの歩み」と題された、戦後のジェンダーに関するデータ紹介、また39面では、今なお、出産を機に仕事を辞めざるを得なかった女性たちの声が集められている。

私は、育った時代、家庭の環境もあってか、(「家事を女性任せにする」という選択肢はなかったものの)、「男が稼いで一家を支えるべき」という「性別役割分業」的価値観がなくもなかった。だが、家族ができ、家事育児と仕事との両立に悩み、また現在の職場で社会学に触れる中で、そうした考えは「一掃されて」いる。そういう意味もあり、この連載、大変興味深い内容となっている。

 

日本経済新聞

新年の連載記事のテーマは「成長の未来図」。見出しは「資本主義 創り直す」とある。日本は成長、格差、幸福度のいずれも他国と見劣りすることをデータで示しながら、成長力が伸びず、格差が拡大し、人々の幸福度も低い日本の現状を「第3の危機」を位置付け、北欧に見られるような、柔軟な労働市場と手厚い失業給付、実践的な公的職業訓練を組み合わせた雇用政策「フレキシキュリティー」にその解を求めている。

また、「岐路2022」として、参院選の行方、米中間選挙、中国の習近平体制、withコロナ、グリーン金融、DX、男性の育休取得など、今年の行方を占っている。

やはり、「経済ありき」なのは日経だが、それでも、戦後の高度経済成長からバブル期までを牽引した「日本型」は完全に行き詰まり、次の経済、社会の形について問い出したのは、これまでどことなく「成長路線上の未来像」しか描けなかった日経としては特筆すべきだろう。

 

あやべ市民新聞

昨年から購読しているローカル紙。1日付は通常の5倍近いボリューム。トップの念頭所感は「綾部の底力」として、人口減少に歯止めがかからない中、定住促進や避けて通れない国際化に対し、「グンゼ日東精工、大本をうんだ綾部ならではの底力を信じている」と締めくくっている。

 

全体的に、2年にわたるコロナ禍はいまだ続くものの、ワクチンや飲み薬の開発といった「アフターコロナ」が見えてきた中で、そして2030年(SDGsのターゲットイヤーでもある)が見えてくる中で、来るべき社会を見据え、それに対して、私たちはいかにあるべきか、何をなすべきかという論調が目立った。

コロナ禍によって、未来への変化の速度が早まった、という見方も多いが、そうした中、先送りできない課題、経済、環境、ジェンダーバランス、デジタル化など、大きく立ち遅れたしまった日本の立ち位置について、もう待ったなし、という問題意識、危機意識が出ていると言えようか。