誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

2021年元日新聞比べ読み

今年もやります。元日新聞比べ読み。コンビニをはしごしなければ各紙揃わないのがここ数年の傾向。
 
昨年から続く連載記事「共生のSDGs」が面白い。元日はコロナ禍による経済活動や観光の停滞が環境の改善につながってきていることをベネチアとインドのレポートから論じている。そして識者のコメントを集め、「コロナ禍は地球環境への人類の影響を改めて示した」と、大量消費・環境破壊を追い求めた人類への警告とまとめている。
個人的に興味があったのは、「食の向こうに 世界を味わう」という特集記事。イギリスのウナギ料理のこと、そして京都大学人文科学研究所の藤原辰史先生と俳優松重豊の「食」にまつわる対談。藤原先生の提唱している「縁食」はちょっと注目している。
 
読売新聞
トップ記事「中国『千人計画』に日本人」の見出しが目に飛び込んだ。「千人計画」とは、中国政府が世界中の優秀な人材を集めるプロジェクト。昨年の「学術会議の任命拒否」の件でも少し話に出た言葉(この2つを結びつけて語るのは無理な話だが)。そして社会面の1ページの多くにも紙面を割いている。
この「千人計画」、寡聞にして詳細は知らないが、経済成長とコロナ禍を”押さえ込んだ”中国の「自信」、そしてヘゲモニー国家に向けた「野望」(「ヘゲモニー国家にはなれない」という論調も強いが、それはここではひとまず置いておく)、ただ一方で、日本における学術研究費、そして政策の貧弱さがこうしたことを後押ししているとも見ることができる。
そして、毎年恒例「大上段に構えた総花的な社説」。
 
こちらも読売同様、独自の記事がトップ。「中国『闇』ワクチン日本へ」というややショッキングな見出しが目を引く。中国で製造したとされる新型コロナウイルス感染症の未承認ワクチンが日本に持ち込まれ、企業経営者などの一部の富裕層が接種を受けていたというもの。
未承認のワクチンを富裕層が接種していたという「健康と安全を金で買う」ということ、ワクチン開発の国際競争、ここでは中国の経済圏構想「一帯一路」という、やはり中国の政治・経済・外交上の存在感が日増しに大きくなっていることなど、論点はたくさんあるが、感覚的に「気分の悪い記事」であった。
一方で、関連記事として、東京都立大学詫摩佳代先生の「コロナの感染収束と経済回復はワクチン分配を巡る格差解消が必要」という論には救われる。
また、社説では民主政治の回復について、また有識者新春座談会では多様性と、今日の国際社会において退潮気味の価値観について今一度見つめ直すような論調には賛同できる。
 
こちらのトップは何と毎日の論調とも重なる「民主主義」。だが、よく読むと、「中国型の権威主義、強権政治」が南太平洋の島嶼国家で広がっていることを懸念する内容。そしてトップの論説は「中国共産党をもう助けるな」。論説委員長は、かつて自称「親中派」だったそうだが、1989年の天安門事件で、西側諸国が強硬な態度を取る中、唯一日本だけが中国に寛容であったことに業を煮やしたこと、そして今、再び同じ「愚」を日本が繰り返しているという内容。
 
元日から始まる連載「第4の革命 カーボンゼロ」がトップ。昨年、日本も2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすると宣言したのを受け、農業、産業、情報に注ぐ「第4の革命」と位置づけ、技術革新による温室効果ガスの削減を後押しする論調。もう、10年後には自動車の姿も変わっているのだろうということはおぼろげながら感じることができるが、一方で行き過ぎた資本主義や人間の止まることのない欲望をいかにコントロールするかのオピニオンは、現時点では見られない。
他方、面白かったのが社会面。「Discover70's」では、ドラマから見る家族の形の変化を、「新たな一歩今踏み出す」では、コロナ禍で自分を見つめ直し、新たな道を歩み出した人に焦点を当てている。昨年、東京都の人口が久しぶりに流出超過になったというニュースが出回ったが、ここでも「地方移住」についての話が出ている。
 
全国紙のような「国際問題」「大上段」の記事は少ないが、トップの「コロナ社会ディスタンス 結び直す」の「地方移住」に関する記事が目を引いた。
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、さいたま市から綾部市へ移住した家族や横浜市に住む、舞鶴市出身の会社役員が舞鶴市内に開設したコワーケーションスペースに関心を示しているものの、移住は難しい、といったことが書かれている。
さらに社会面にも関連記事として「”田舎”魅力は濃密」というタイトルで移住支援とその実際について紙面を割いている。
現在の研究と教育のテーマがまさにこれ。今後の連載に注目したい。
 
 
全体的に、「SDGsないしは環境問題」「中国」の記事が目立つ。それだけ、2020年代の「大きな宿題」なのだろう。