誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

2020年新聞比べ読み

今年も元日の新聞(読売、産経、朝日、毎日、京都、日経)比べ読みをしました。

新聞はメディアとしては「衰退」「終わった」と見られがちですが、自分は新聞って好きなのです(その姿勢やビジネスモデルには問題ありですが)。

ということで202011日付の新聞比べ読み。

 

読売

毎年お馴染みの「大型社説」。概ね、政府の政策をなぞった内容で、新味なし。

2020年オリパラの先にある「2025万博」に夢を膨らませる特別面の記事も。

京都地方欄の教育に関する記事は面白い。立命館小学校の正頭英和先生と、京都精華大学学長のウスビ・サコ先生のインタビュー記事。本務校所属学部のゼミの取り組みも記事に。

 

産経

政府の機関紙か?と思わせるような紙面。「オリンピックで日本再生(ここにはパラリンピックへの眼差しがほとんど見られない)」「五輪後に景気は回復傾向」などなど、威勢がいい。お馴染みの「首相と語る」の見開き記事も毎年のこと。また1面の「年のはじめに」という論説委員長による記事は、現政権はよくやっているが、「岩盤支持層」が期待する憲法改正靖国参拝が進まないのは「”左派”と中国のいいなりのため」と舌鋒鋭い。

面白いのは「大阪都構想推し」の記事がやたら目立つこと。好き嫌いはあるかもしれないが、文芸評論家の神保祐司氏による「正論」は「ヴェートーヴェン誕生250年」に絡めた良記事。

 

朝日

昨年末に飛び出した「IR汚職」に関するすっぱ抜き記事をトップに。

社説は「2020年代の世界 『人類普遍』を手放さずに」と題して、人権、人間の尊厳、法の支配、民主主義といった、西洋近代が打ち立ててきた「普遍」が、今世界中で起こっているナショナリズムや排外主義、ポピュリズムといったことで揺らいでいると見る。返す刀で日本の現政権も「普遍離れ」という意味では、世界の憂うべき潮流と軌を一にしているとのべる(この辺に「朝日嫌い」の人たちが反応するんだろうなあ)。

面白かったのは社会面の小沢健二きゃりーぱみゅぱみゅのインタビュー記事「なまえのはなし」。

 

毎日

社説は朝日同様、「民主主義の揺らぎ」を問う内容。ポピュリズムの台頭で、これまで市場経済の発展と民主主義は「セット」と思われていたものが揺らぎ出した。それは2008年のリーマンショックに端を発し、国際的に低成長になるなか、グローバル化の進展で先進諸国の中産階級が没落し、民主主義が脅かされる状況が現れた。そんな中で中産階級の不満を煽ることでポピュリズムが台頭したのだという。だがそんな中で日本が果たすべき役割は大きく、「(民主主義を)あきらめる心にあらがいたい」と締めている。

興味深いのは京都地方欄。「今よみがえる黎明の平安京」という見開き全て使っての特集。平安時代のまちの形、暮らしぶりの紙面が圧巻。

 

京都

今年は京都市長選、大津市長選が年明け早々にある。その分析と、やはり昨年の皇位継承に絡め皇室関連の記事は目を引く。

東京五輪」関連の記事も多いが、東京から「ちょっと離れた」地方紙、しかも京都ならではの視点が面白い。社説では「『縮小社会』生き抜く知恵を」と題し、人口減少の後やってくるであろう「定常社会」では、新たな精神的・文化的価値への創造が見られるのだという。若者の「ローカル志向」の高まりも、それを直感的に感じ取っているからなのではないかと述べている。

市民版の「京都を拠点に無二の活動(とんがった、あるいは”変な”人たちや活動)に取り組み、輝きを放つ人たちに心のメダルを贈る」「京都オリンピック」の特集記事はユニーク。

 

日経

今年の新年連載特集は「逆境の資本主義」。ポピュリズム保護主義が渦巻く世界で、朝日・毎日が「民主主義」に軸足を置いたのに対し、日経は「資本主義」に軸足を置いているが経済紙らしいところ。

景気については、産経が「五輪後景気回復?」としているのに対し、日経は「五輪後消費息切れ?」とやや悲観的。

面白いのは昨年末からの連載「1964→2020」。『日本標準職業分類』上で1960年代にあったが、その後消えた職業(タイピストなど)と、その後リスト化された職業(サーバー管理者など)を挙げ、さらにAIの出現や働き方の多様化で「職業」という枠が薄れていくと予測している。

 

でも全体的に大晦日に飛び込んできた「ゴーン被告海外逃亡」に紙面を割かれているので、各新聞ごとの個性は薄め。