誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

ゼミ活動報告会

2月19日、綾部市あやべ・日東精工アリーナで開催された「令和元年度 むすびわざプロジェクトinあやべ 京都産業大学事業報告会」に参加した。今年度はうちのゼミのほか、経済学部のゼミも綾部に入り、ゼミ活動を行ってきた。

私たち教員のミニ講演とゼミの活動報告が主な内容。

 

私の講演テーマは「今、なぜ”あやべ”なのか?」。これまでゼミ生たちとともに地域に入り、地域の方々とともに取り組んだこと、議論したことから考察した内容。

主な内容は以下の通りである。

 

1.綾部の人の綾部知らず?!

9月にゼミ生たちと地元高校生とがワークショップを行った。そこでの対話から学生たちが考えたこととは?

・ 彼らが口々に言ったのは「綾部の子、綾部の人が綾部のことを知らないこと、そして伝えないこと」

・内にも、外にも「あやべ」は伝わっているか?

 

2.様々な「人々の取り組み」

・昨年度、そして今年度入らせていただいた水源の里集落で、地域の人たちが取り組んでいること

・毎年11月に上林小中学校で開催される「上林フェスティバル」。小学校の「学習発表会」が地域ぐるみのイベントになっていることの意義

・昨年11月に開催された「田舎を楽しむ学校(田楽学校)」について。地域で様々な取り組みをされている「人」がその知識や思いを来場者に「授業する」取り組みについて。

 

3.地域を「受け継いでいく」ということ

・今年度関わらせていただいた水源の里 古屋の「庚申さんご開帳」について。次の庚申年は2040年であるが、この頃、「団塊ジュニア」が高齢者の仲間入りをし、の日本の人口構成は今の綾部市と同じぐらいになっているという将来予測がある(日本の人口が1億1千万人、うち65歳以上が3800万人。高齢化率約35%)。次の「庚申さんご開帳」を行おうと思えば、その時まで集落が維持できていることが前提になる。

・「意地」が「維持」につながるのではないか。これまで2年間、地域の方にお話を伺ってきたが「私たちが現役でいる限り頑張る」ということを聞くことができた。支える仕組みは早急に整えなければならないが、まずは「意地」を持つこと。ひいてはそれが集落の「維持」につながるのではないかという思いを持ったこと。小田切徳美先生(2014)が言うところの「誇りの空洞化」に陥らないようにすることが肝要だ。

 

4.まとめ~今、なぜ“あやべ”なのか?

・地域の資源としての「人」の力。綾部の資源は「人」である。人々の知恵や技、行動、思想が綾部を魅力的にしている。この、現代の人々の取り組み、思い、願いをいかにして次世代につなげるか。

・縮小社会において求められるのは「持続可能性」。綾部はすでに進むべき未来に向けての道を歩いている。

・これから人口減少社会を迎えるであろう日本の各地域はもちろん、東アジアの国々に対しても綾部の経験は処方箋になりうるのではないか。

・だが、こうした「人の営み」を次世代に対して引き継いでいるだろうか?

 ・若い人が一旦外に出るのは構わない。だが、その後、「帰ってきたい」と思わせるような地域づくりはできているか。

 ・地の人も、移住者も、若者も、人生に疲れて逃れてきた人も、あらゆる出自を持つ人が「心配せずに暮らせる地域」、それが綾部であればいい。「人」たちがいきいきと幸せに生きられる。そんな綾部が良いのでは。

 

続いての、うちのゼミの報告テーマは「課題発見と解決へのアプローチ」。

9月に実施した、地元高校生とのワークショップで「地元高校生が地域のことを知らなかった」と言うことはかなり衝撃だったらしい。昨年の水源の里での取り組み、そして今年度の取り組みを踏まえて、3回生6人が、課題を解決するためのプロジェクトのアイデアを披露した。主な内容は以下の通り。

・地域の技や文化、人々の思いを伝えるための情報発信

・「生きづらさ」を抱えている若者が地域でいかに共生できる社会を作るか

・地域の人に知られていないが「実はすごい」産業や文化のことを地域の若者に知ってもらい、親しんでもらうためのアイデア

・地域住民の健康をいかにして維持していくか

Society5.0時代の行政改革

 

中には「ここまで言って大丈夫?」と言うような主張もあったが、決して表面的になぞっているのではなく、自分たちなりに現場に関わり、調べ、考察した、本気の提案であることは伝わったのではないだろうか。

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本当は明日(228日)に、2回生が取り組んできた集落紹介冊子『古屋AtoZ』の完成お披露目の機会を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、延期となった。

この19日と28日の報告会の内容をまとめてブログに書きたかったので、19日の内容だけで見ると、ずいぶん遅い記事となってしまった。

 

当日の様子は地元紙の『あやべ市民新聞』さんが記事として取り上げてくださっていた。感謝である。

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『あやべ市民新聞』の掲載紙面。

 

冊子(下写真)は、26日に市役所で会議があった際に、担当課に立ち寄り、いただいてきたので手元にあるが、早く学生たちに手渡すとともに、集落の方、地域の皆様方に対してのお披露目を早く行えたら、と思う。

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完成した水源の里集落紹介冊子『古屋AtoZ』

 参考文献

田切徳美(2014)『農山村は消滅しない』岩波新書