誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

多世代交流と成長


綾部市を舞台に開催された、7月27日の「長〜い流しそうめん&盆踊り大会」、8月2・3日の「綾部こども探偵」に学生と共に参加したので、そのレポート。

 

「長〜い流しそうめん&盆踊り大会

理事長を務めるNPO法人里山ねっと・あやべ主催事業。今年4月に新施設が竣工し、初の大型イベントとなった。

里山ねっと・あやべは、都市農村交流や移住定住に向けた情報提供などについては20年以上の実績があるが、反面、施設が立地する地元とのコミュニケーションという点においては十分とは言えなかった。

今回は、事務局長の発案により、「地元の人たちが楽しめるイベント」というコンセプトのもと実施したのがこちら。

流しそうめんは、森林ボランティアの方々に竹の伐採をお願いし、それを使い落差3.5m、長さ35mの樋を作って、流しそうめんを流した。うだるような暑さの中、ゼミ生2名がそうめん流しに携わったり、夏休みに入った時期ということもあり、子どもたちとさまざまな遊びの相手をしたりした。

そうめん流しを行う

子どもたちと

夕方からは、盆踊り大会。それに先立ち、地元で踊られてきた福知山音頭、綾部踊りのレクチャーを地元保存会の皆さんにしていただいた後、庭に設置された櫓の周りで盆踊り。私が四苦八苦する中、学生たちはメキメキ上達していく。やはり身体の動きとリズム感が違うのだろう。

綾部踊りを踊る

綾部市の公式YouTubeチャンネルでも紹介された。

www.youtube.com

 

「綾部こども探偵」

8月2・3日は綾部市と滋野ゼミとの協働事業である「綾部こども探偵」を実施。

「綾部こども探偵」は、地元の小学生たちが「探偵」となって、綾部の木になるところを「調査」し、それをもとに「報告をまとめ、発表する」という企画。それをサポートする学生は「助手」という役割である。

この事業は前年度に「綾部市の情報発信」について研究する学生2名と市の広報セクションの職員の方とを、コロナ禍のなか、オンラインで意見交換をしてきた中で生まれた事業。「情報発信」を議論する中で、「地元の子供達からの情報発信ならば、大人も見るだろう」と考え、子どもたちの綾部の情報発信を、市の広報誌に掲載しようという中で誕生したのが発端。

昨年度は学生2名、子どもたちも5名程度と少なかったものの、子どもたちにとっても学生にとっても、そして市にとっても意義ある事業となったため、「定例化していこう」ということに。

しかし今年度は、当時の背景を全く知らない学生が事業を担当する。当然当初はモチベーションも上がらないままであった。

しかし、イベント広報を、地元のコミュニティFMでさせてもらったのを皮切りに、徐々に担当メンバーが集まり出した。それでも「何をすればよいかわからない」「(訪綾の回数が少ないこともあり)綾部のことをよく知らない」学生たちが担当することについての一抹の不安はあった。

そこで、「子どもたちも、学生たちも共に学ぶ」という方針で進めることにした。

今年度は「探偵(小学生)」9名、「助手(大学生)」8名という、昨年よりも多いメンバーが集まった。

各訪問先では、「探偵(小学生)と助手(大学生)」が、良いコミュニケーションを取れており、当初の心配は杞憂となった。中には、ある学生をとても頼ってくれる小学生もいたりして、学生たちもまんざらではない様子。

あやべバラ園にて

黒谷にて

里山交流研修センターにて

イカ割りの様子

2日目は、初日の訪問先のメモをもとに「調査報告書」を作成し、発表するするのだが、この「報告書」が、そのまま夏休みの自由研究にも使えるというものにした。昨年度は模造紙にグループで「壁新聞」のように作ったので、持って帰ってもらうことができなかったという課題を踏まえ、今回はA3サイズの紙に文章と写真やイラストを入れ、一人一人が作成するというもの。これが功を奏し、小学生たちは自分のペースで仕上げることができるし、学生もほぼマンツーマンに近い形で、作成のアドバイスを行なっていた。

ここでも、特に詳細な指導はしていないのだが、ヒントを出したり、書き方へのアドバイスをするなど、自分たちなりに工夫して小学生に伝えている姿を目にすることができた。

 

両事業を終えて

今回、「長〜い流しそうめん&盆踊り大会」「綾部こども探偵」に参加、実施してみて思ったのが、やはり、日常と異なる人たちとの交流や協働作業は学生の成長を促すということ。

前者では、流しそうめんや遊びに来た近くの子どもたちばかりでなく、踊りを教えにこられた方や、地域住民の方、NPOの事務局の方とのコミュニケーションが、そして後者では、2日間、子どもたちと学生とがほぼマンツーマン、「ガチで」接するという経験を通じて、ずいぶん成長したように思う。

また、地元から見ても、高校を卒業し、進学や就職のため、多くの人が出ていってしまうため、20歳前後の若者の数が極端に少ないということもあり、小学生から見れば「お兄さんお姉さんのような」、地域の高齢者の方から見れば「孫のような」世代と接することは良い刺激になるのではないかと考えている。

親や先生といった「タテの関係」、友だちといった「ヨコの関係」だけでなく、「ちょっと年上、家族親族ではない若者」といった「ナナメの関係」ができることで、良い刺激になっている。

一方の学生にとっても、日常生活での人間関係はそんなに広いわけではない。そんな時、普段とは違った年代、属性の人たちとの交流は、自分の視野を広げ、異なる価値観を接する絶好の機会なのだと思う。

毎年、学生たちが「合宿で一皮剥ける」と感じているが、9月に実施する5大学の合同合宿「インターゼミ」でさらに「一皮剥ける」のが楽しみである。

多世代交流と成長


綾部市を舞台に開催された、7月27日の「長〜い流しそうめん&盆踊り大会」、8月2・3日の「綾部こども探偵」に学生と共に参加したので、そのレポート。

 

「長〜い流しそうめん&盆踊り大会

理事長を務めるNPO法人里山ねっと・あやべ主催事業。今年4月に新施設が竣工し、初の大型イベントとなった。

里山ねっと・あやべは、都市農村交流や移住定住に向けた情報提供などについては20年以上の実績があるが、反面、施設が立地する地元とのコミュニケーションという点においては十分とは言えなかった。

今回は、事務局長の発案により、「地元の人たちが楽しめるイベント」というコンセプトのもと実施したのがこちら。

流しそうめんは、森林ボランティアの方々に竹の伐採をお願いし、それを使い落差3.5m、長さ35mの樋を作って、流しそうめんを流した。うだるような暑さの中、ゼミ生2名がそうめん流しに携わったり、夏休みに入った時期ということもあり、子どもたちとさまざまな遊びの相手をしたりした。

そうめん流しを行う

子どもたちと

夕方からは、盆踊り大会。それに先立ち、地元で踊られてきた福知山音頭、綾部踊りのレクチャーを地元保存会の皆さんにしていただいた後、庭に設置された櫓の周りで盆踊り。私が四苦八苦する中、学生たちはメキメキ上達していく。やはり身体の動きとリズム感が違うのだろう。

綾部踊りを踊る

綾部市の公式YouTubeチャンネルでも紹介された。

www.youtube.com

 

「綾部こども探偵」

8月2・3日は綾部市と滋野ゼミとの協働事業である「綾部こども探偵」を実施。

「綾部こども探偵」は、地元の小学生たちが「探偵」となって、綾部の木になるところを「調査」し、それをもとに「報告をまとめ、発表する」という企画。それをサポートする学生は「助手」という役割である。

この事業は前年度に「綾部市の情報発信」について研究する学生2名と市の広報セクションの職員の方とを、コロナ禍のなか、オンラインで意見交換をしてきた中で生まれた事業。「情報発信」を議論する中で、「地元の子供達からの情報発信ならば、大人も見るだろう」と考え、子どもたちの綾部の情報発信を、市の広報誌に掲載しようという中で誕生したのが発端。

昨年度は学生2名、子どもたちも5名程度と少なかったものの、子どもたちにとっても学生にとっても、そして市にとっても意義ある事業となったため、「定例化していこう」ということに。

しかし今年度は、当時の背景を全く知らない学生が事業を担当する。当然当初はモチベーションも上がらないままであった。

しかし、イベント広報を、地元のコミュニティFMでさせてもらったのを皮切りに、徐々に担当メンバーが集まり出した。それでも「何をすればよいかわからない」「(訪綾の回数が少ないこともあり)綾部のことをよく知らない」学生たちが担当することについての一抹の不安はあった。

そこで、「子どもたちも、学生たちも共に学ぶ」という方針で進めることにした。

今年度は「探偵(小学生)」9名、「助手(大学生)」8名という、昨年よりも多いメンバーが集まった。

各訪問先では、「探偵(小学生)と助手(大学生)」が、良いコミュニケーションを取れており、当初の心配は杞憂となった。中には、ある学生をとても頼ってくれる小学生もいたりして、学生たちもまんざらではない様子。

あやべバラ園にて

黒谷にて

里山交流研修センターにて

イカ割りの様子

2日目は、初日の訪問先のメモをもとに「調査報告書」を作成し、発表するするのだが、この「報告書」が、そのまま夏休みの自由研究にも使えるというものにした。昨年度は模造紙にグループで「壁新聞」のように作ったので、持って帰ってもらうことができなかったという課題を踏まえ、今回はA3サイズの紙に文章と写真やイラストを入れ、一人一人が作成するというもの。これが功を奏し、小学生たちは自分のペースで仕上げることができるし、学生もほぼマンツーマンに近い形で、作成のアドバイスを行なっていた。

ここでも、特に詳細な指導はしていないのだが、ヒントを出したり、書き方へのアドバイスをするなど、自分たちなりに工夫して小学生に伝えている姿を目にすることができた。

 

両事業を終えて

今回、「長〜い流しそうめん&盆踊り大会」「綾部こども探偵」に参加、実施してみて思ったのが、やはり、日常と異なる人たちとの交流や協働作業は学生の成長を促すということ。

前者では、流しそうめんや遊びに来た近くの子どもたちばかりでなく、踊りを教えにこられた方や、地域住民の方、NPOの事務局の方とのコミュニケーションが、そして後者では、2日間、子どもたちと学生とがほぼマンツーマン、「ガチで」接するという経験を通じて、ずいぶん成長したように思う。

また、地元から見ても、高校を卒業し、進学や就職のため、多くの人が出ていってしまうため、20歳前後の若者の数が極端に少ないということもあり、小学生から見れば「お兄さんお姉さんのような」、地域の高齢者の方から見れば「孫のような」世代と接することは良い刺激になるのではないかと考えている。

親や先生といった「タテの関係」、友だちといった「ヨコの関係」だけでなく、「ちょっと年上、家族親族ではない若者」といった「ナナメの関係」ができることで、良い刺激になっている。

一方の学生にとっても、日常生活での人間関係はそんなに広いわけではない。そんな時、普段とは違った年代、属性の人たちとの交流は、自分の視野を広げ、異なる価値観を接する絶好の機会なのだと思う。

毎年、学生たちが「合宿で一皮剥ける」と感じているが、9月に実施する5大学の合同合宿「インターゼミ」でさらに「一皮剥ける」のが楽しみである。

1月27日開催!「あやべ田舎生活実践塾」参加者募集中

ゼミ生が担当しているイベント。「あやべ田舎生活実践塾」。

なかなか、参加者集めに苦労しているようです。

今回は、山崎善也綾部市長と株式会社 ワードスプリング 蒲田正樹さん(『驚きの地方創生「京都・あやべスタイル」』(扶桑社新書)著者)の対談。

会場は京都市役所そばの「京都ペレット町家ヒノコ」内のあやべ定住サポート京都サテライト店(京都ペレット町家ヒノコ内)です。

詳細・申込みは下記URLから。

https://ijurikkoku.com/2023/01/23/2023-1-27/

 

綾部は、わりと早い時期から移住促進を進めたり、限界集落を「水源の里」と呼び、その地域の活性化に取り組むなど、先進的な政策を進めてきました。

しかし今、全国の地域で「移住定住」や「関係人口の呼び込み」が進んできた結果、移住検討先の「ワンノブゼム」でしかないのかもしれません。

それでも、綾部には人を惹きつける「何か」があると考えています。私はその一つに「人の魅力」があると思います。それが「人が人を呼ぶ」ような移住につながっているのでしょう。

そんな綾部市の行政トップとメディアの一翼を担う方との対談は、単なる「移住良いよ」「田舎暮らし良いよ」にとどまらないお話になるのではないでしょうか。

 

2023年 元日新聞くらべ読み

今年もやります。「元日新聞くらべ読み」。

 

あやべ市民新聞

購読を初めて2年目になる。新聞を取り巻く環境は厳しいが、いつも地域に根ざした記事を提供してくれる同紙。

面白い(というか「特ダネ」かも)のが「かつて山家(やまが)に「芝居小屋」があった」という記事。江戸時代から同地域には芝居小屋があったという歴史を、地元の歴史の会が発掘を進めているらしい。現在は過疎化が進むこの地域になぜ芝居小屋があったのかというと、かつてここは街道筋で、明治末期まではここで渡し舟を使って由良川を渡る必要があったらしいが、大水が出ると旅人は逗留を強いられたとのこと。そのために芝居小屋が置かれたのではないかという見立て。

私の専門は(実は)地域文化政策だが、人口減少や高齢化により、文化を享受できる環境が地域から失われてきており、そのことから、人々の創造性涵養においても地域間格差がもたらされていると考えているが、こうした動きが、ささやかであってもそれを解決する一助になればと思う。

 

京都新聞

今春、いよいよ文化庁が京都にやってくる。それにあわせ、知事、市長、文化庁長官の鼎談が見開きで掲載。あまり深い内容ではないが。また、人口流出や財政難に悩む京都市を含め、府、京都市滋賀県政23年の展望はタイムリー。

あと、社説「この地に足をつけて、歩もう」は、国の「地方創生」政策の負の側面を総括しながら、ローカリズムの価値を説く。文化庁の京都移転、統一地方選も今春。京滋は「行政の年」になるのかも。

経済では、永守重信日本電産CEOのインタビュー。前年、後継者問題等で何かと話題を振り撒いた同氏だが、ここで述べられているような見通しはどう出るか。

目を引いたのは、「下京の会津小鉄会元本部跡地を任天堂創業家が取得」という記事。芸術家らの創作拠点などとして整備するらしい。前年、旧本社をホテルに改修するというニュースがあったが、ここはその創業の地にも近い。最近、旧五条楽園にある建物等がゲストハウスや銭湯などに改修され、注目されているが、この地は併せて「市民活動・まちづくりの拠点」でもある。地域にどんな変化をもたらすか。

 

毎日新聞

年始の特集が「「平和国家」はどこへ」、そして社説が「危機化の民主主義 再生へ市民の力を集めたい」。昨年起こったロシアのウクライナ侵攻、「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平中国国家主席と「台湾有事」への脅威・・・歴史を紐解けばそういう考え方や行動が出てくることは驚くことではないが、現代的な価値観から見れば、「専制主義」の台頭が世界を覆う不安は増すばかり。そうした中で、日本政府も安全保障政策の大転換へと舵を切った。

社説では、そうした民主主義の危機に通底しているのは人々の不満と不安であると論じる。

その解決に「地方の取り組み」に期待しているのは興味深い。地方自治は、住民に最も近い民主主義である。社説では、国内外の事例や、トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』を引きながら、地方自治の重要性を説く。統一地方選を控えて、という論調ではあるが、住民一人ひとりが「地域の担い手」として政治や地域の運営に関わるなかで、民主主義を育てていくことが、実は「専制主義」に対抗する手段になるのかもしれない。

 

朝日新聞

年始の特集は「ともしび わたしのよりどころ」。ノーベル賞作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさんのインタビュー記事。1、2面のインタビューと社説とをあわせ、人間がなお戦争を引き起こし、そのことで人間性を揺るがす愚かしさをあぶり出している。そしてその解決のための構想の必要性を論じている。

面白かったのは11面の「「覚悟」の時代に」という1面全てを使ったオピニオン記事。方や「若者代表」として国際NGOアース・ガーディアンズ・ジャパン代表の川崎レナさん、方や「高齢者代表」の宗教学者山折哲雄先生。「大人もこともも同じチームにいる」「議論には心理的な安全性が必要だと思う」といった、川崎さんの若い感性は”刺さる”。一方、山折先生の意見は、「命」に関する長い時間と深い思考によって”練られた”言葉が目をひく。

地方欄(京都)の「ぐるっと「食」見聞録」「関西のナゾ 京都タワー」は知っていることも知らなかったことも含め、純粋に楽しめた。

 

日本経済新聞

こちらも、新春特集のテーマは「分断」。だが、「グローバリゼーション」について全面的に焦点を当てているのが前出の紙面と異なる。確かに、ロシアのウクライナ侵攻、中国の大国化と覇権主義が世界に与えた影響は大きい。1面トップの見出しが「グローバル化止まらない」となっているが、好むこの混ざるに関わらず、私たちはグローバル社会の中におり、その中で翻弄もされ、かつチャンスも手にする。それは国際社会であれ、都市であれ地方であれ同じである。

面白かったのが「打ち破れ2023」。今は「不確実性の時代」と言われるが、そんな中、過去のしがらみや常識を捨てて未踏の地を切り開く各分野のキーパーソンに焦点を当てた記事。政治であれビジネスであれ学術であれ、社会を動かすのは「人」である。そして彼ら/彼女らは、直面する課題に挑み、道を切り開いているのである。

 

産經新聞

年初のテーマは「民主主義の形」。ロシアや中国をはじめとする「権威主義」の国が台頭する一方、民主主義の国や地域は後退し、今や権威主義と民主主義の国とがほぼ拮抗している。産経の主張では、こうしたさまざまな問題に立ち向かうのは「国家」が主語である。

面白かったのは、岸田首相と歴史学者磯田道史さんとの新春対談。首相が自らが成し遂げた政策について「自画自賛」する一方で、磯田氏は、歴史と共に戦争の仕方が変わるなか、防衛の形が変わる、変わらざるを得ないことは認めた上で、今やコロナ禍のようなウイルスや気候変動など世界が「手を携えていかなければならない」問題だらけの現在、ロシアのウクライナ侵攻を引きながら、戦争の愚を案じている。

それは、後半の徳川家康の人物評にもつながる。磯田氏曰く、家康は「多様性を認めたリーダー」だという。家康は無理をしない、「分配と棲み分け」、多様な考えを認める政治を行い、天下泰平の徳川時代が続くことになったという指摘は興味深い。

 

讀賣新聞

1面には特段新春の特集記事はないが、新春名物の「大きな社説」は健在。今年1回目の題は「平和な世界構築の先頭に立て 防衛、外交、道義の力を高めよう」である。産経同様、問題に立ち向かう主語は「国家」であるのは産経と同じ。

岸田首相のインタビュー記事と同じ面にあり、目立たない記事だが「地域おこし協力隊 経験者活用 「協力隊」ネットワーク化へ」という記事に目が行った。2026年に現役隊員を1万人とする目標に向け、隊員の活動支援や相互の連携強化、また協力隊のOB・OGのネットワーク化によって、現役隊員との情報交換やノウハウの共有を図っていくという内容。

京都欄には、文化庁の京都移転に合わせ、妙心寺塔頭・退蔵院のお抱え絵師となった村林由貴さんの記事の全編。プロジェクトに選ばれ、住み込みで修行をしながら向き合った過程の記録。後編が楽しみ。

 

ロシアのウクライナ侵攻、「台湾有事」への恐怖、続く円安、待ったなしの気候変動対策・・・といった情勢を踏まえ、いずれも「分断を乗り越える」「不確実性の社会を生きる」といった論調が目立ったが、その主語や論調はやはり微妙に異なる。

一方、今年の京都の最大のトピックは文化庁の京都移転であろう。それに関連した記事も数多く目にした。

 

2022年元日新聞比べ読み

遅ればせながら、今年も元日の新聞を読み比べました。

ただ、元日付産経新聞だけが手に入らなかったので、ネット記事も引用しながらの講評になるのと、昨年から購読し始めたローカル紙『あやべ市民新聞』を加えて、2022年の元日新聞比べ読み!

 

朝日新聞

新年の連載記事は「未来のデザイン」。1日付はDREAMS COME TRUEと「未来予想図」。連載の意図として、「コロナ禍の2年間は、先の見えない不安に誰もが慄いた時間でもあった。未来はこれまでの延長線上にはないかもしれない。だからこそ探りたい。より良い未来、そのすがたを」とある。続きの2面に目を移すと、西粟倉村の「百年の森林構想」を皮切りに、過去の感染症の流行が歴史を変えてきたこと、そして未来人の立場に立って現役世代が何をすべきかという「フューチャーデザイン」という取り組みが生まれているという紹介につながる。1日付の記事では「未来の社会をデザインしていくのは、私たち自身だ」とあるが、現代人はどうしても「今」だけに目が行きがちで、過去から学ぶことも、未来を想像することもなかなかできない。私たちはどうするべきか。

あと、社会面の「住まいのかたち」は個人的に興味あり。

 

読売新聞

元日お馴染みの3面の半分以上を使う社説がどうしても目に入ってしまう。タイトルは「災厄越えの一歩を踏み出そう」。金融資本主義の行き詰まり、中国の軍事大国化、そしてコロナ禍という、日本を取り巻く大きな変化、試練の中、「給付から雇用へ」「イノベーション」「緊張高まるアジアの最前線に立つ日本」という課題に立ち向かわなければならない。だから参院選で「政権与党頑張れ」という結論へと結びつく。問題認識は正しいのだが、論調が昭和。そして毎年のことだが、大言壮語なんだよなあ。

あと、5面の安倍元首相のロングインタビュー。「読売大好き安倍さん」だからこそのロングインタビューというのは勘ぐりすぎ?

 

毎日新聞 

トップが「ヤフコメ 露が改ざん工作」。ロシアの政府系メディアがヤフーニュースの読者コメント欄をロシア語に翻訳する際に、元の投稿文章を改ざん、加筆した疑いがあるという内容。毎日の元日付は時折、他紙が目をつけなかった記事を入れてくることがある。

社説は「民主主義と市民社会 つなぎ合う力が試される」というテーマ。安倍菅両政権下で異論を排除する動きが強まり、国民の分断が強まったという問題意識から、対話と参加という、本来の民主政治とそれを補完する市民参加の重要性を改めて問うている。

面白かったのは京都と滋賀の対決いろいろ(雑煮とかソウルフードとか駅名とか歌とか)。

 

産経新聞

冒頭でも述べたとおり、元日付のものが手に入らなかったので、3日付のものも参照にしつつ。

新年の連載記事「

www.sankei.com

」が少し気になる(ネット版は有料記事)。

1日付がAI、3日付がウイルスについて書かれている。2030年という「近未来」に向けて、文明史的な考察は興味深いが、タイトルの「主権回復」というのが少々仰々しい(3日記事ではパンデミックと私権の制限、そして憲法改正について言及があった)。

また、3日付の産経抄は1日に亡くなった池明観(チ・ミョングヮン)氏をしのぶ内容。そのスタンスはさておき、産経の韓国ウォッチはなかなか面白いことがある。ただ、3月の大統領選を控え、他国の与党の政策や姿勢をくさすのはどうかなあ。

 

京都新聞

昨年から続く連載「つなぐOurVoices 性を考える」は、「均等法『第一世代』」。男女雇用機会均等法施行直後に入社した女性社員が、様々な苦労を重ねながら現在があることが綴られている。1986年に男女雇用機会均等法が施行された頃はまさにバブル時代。「24時間戦う」ことが美徳とされた時代に社会人となり、社会でも企業でも「男尊女卑」の風潮がまだまだ根強かった当時、「次世代のために」と踏ん張り、今があることが綴られている。

21、22面では、「戦後のジェンダーの歩み」と題された、戦後のジェンダーに関するデータ紹介、また39面では、今なお、出産を機に仕事を辞めざるを得なかった女性たちの声が集められている。

私は、育った時代、家庭の環境もあってか、(「家事を女性任せにする」という選択肢はなかったものの)、「男が稼いで一家を支えるべき」という「性別役割分業」的価値観がなくもなかった。だが、家族ができ、家事育児と仕事との両立に悩み、また現在の職場で社会学に触れる中で、そうした考えは「一掃されて」いる。そういう意味もあり、この連載、大変興味深い内容となっている。

 

日本経済新聞

新年の連載記事のテーマは「成長の未来図」。見出しは「資本主義 創り直す」とある。日本は成長、格差、幸福度のいずれも他国と見劣りすることをデータで示しながら、成長力が伸びず、格差が拡大し、人々の幸福度も低い日本の現状を「第3の危機」を位置付け、北欧に見られるような、柔軟な労働市場と手厚い失業給付、実践的な公的職業訓練を組み合わせた雇用政策「フレキシキュリティー」にその解を求めている。

また、「岐路2022」として、参院選の行方、米中間選挙、中国の習近平体制、withコロナ、グリーン金融、DX、男性の育休取得など、今年の行方を占っている。

やはり、「経済ありき」なのは日経だが、それでも、戦後の高度経済成長からバブル期までを牽引した「日本型」は完全に行き詰まり、次の経済、社会の形について問い出したのは、これまでどことなく「成長路線上の未来像」しか描けなかった日経としては特筆すべきだろう。

 

あやべ市民新聞

昨年から購読しているローカル紙。1日付は通常の5倍近いボリューム。トップの念頭所感は「綾部の底力」として、人口減少に歯止めがかからない中、定住促進や避けて通れない国際化に対し、「グンゼ日東精工、大本をうんだ綾部ならではの底力を信じている」と締めくくっている。

 

全体的に、2年にわたるコロナ禍はいまだ続くものの、ワクチンや飲み薬の開発といった「アフターコロナ」が見えてきた中で、そして2030年(SDGsのターゲットイヤーでもある)が見えてくる中で、来るべき社会を見据え、それに対して、私たちはいかにあるべきか、何をなすべきかという論調が目立った。

コロナ禍によって、未来への変化の速度が早まった、という見方も多いが、そうした中、先送りできない課題、経済、環境、ジェンダーバランス、デジタル化など、大きく立ち遅れたしまった日本の立ち位置について、もう待ったなし、という問題意識、危機意識が出ていると言えようか。

綾部の皆さん、よろしくお願いいたします

今日は綾部の1日。
まず、昼から綾部のコミュニティFM「FMいかる」の番組コーナー「わくわく里山的生活」に出演。パーソナリティの田中利典さんとは、およそ20年ほど前に、奈良で仕事をした時に名刺交換をして以来。そのことをお話しすると驚いておられた。トークでは、事務局長、そしてゼミの卒業生の実習生と共に出演し、このたび新理事長なっての抱負等を語った。

www.city.ayabe.lg.jp

続いて、事務局で、今後の事業や方針についての意見交換。前日に、事務局スタッフ、理事の1名とオンライン上で意見交換をしていたこともあり、自分の中ではやりたいことや、やらなければならないことについてクリアになっていた。
 
その後、市長との面談が控えていたが、急遽地元紙の『あやべ市民新聞』での取材も決定。まず、新聞社へ行き、市長との面談後に立ち寄る約束をする。
 
夕方から市長との面談。担当課のアテンドで市長と意見交換。こちらも和気藹々と進めることができた。ここでも、団体が何を目指すのか、どんな事業をするのかということを、外部に向けて発信する、ステークホルダーとのコミュニケーションを活発化させる、綾部が移住施策で一歩抜きん出ていた時代から時は移り、他都市も移住に力を入れるようになった中で、移住者に綾部を選んでもらうためにどんな事業をすべきか戦略を練る必要があることを力説した。
 
最後は、あやべ市民新聞社で取材を受ける。地元の人物を紹介する「ひと」の欄にインタビュー記事が掲載されるそう。まずは自己紹介。「二地域居住者」であることをアピール。そしてその後、久しぶりに、過去30年ほどの経歴を語ったような気がする。この流れの中に現在がある。そして綾部との縁も、実は祖父母の代まで遡る。決して、ゼミで関わるようになってからの縁ではないのである。
ここでもこれからの抱負や綾部の強み、弱み等についても話は弾み、どのような記事になるのか、楽しみでもあり、ドキドキでもあり・・・
また、あやべ市民新聞社は移住者の方を積極的に雇用されており、オフィスには知った顔もたくさん。ついつい長話をしてしまった。

ayabe.city-news.jp

 
綾部は、2000年代から移住者の受け入れにおける施策の充実と「人の魅力」で、移住先として、他の自治体から頭一つ抜きん出ていたが、日本全体が人口減少時代に突入し、他都市においても移住施策を充実させてきた結果、もはや、かつてのようなブランド力は存在しない。そうした中で、移住や二地域居住をするにあたり、あるいはとりわけコロナ禍で注目されるようになったワーケーション等で「綾部を選んでもらう」ためにはどんな取り組みをすれば良いか。それを、横の連携、協働でお互いが補完し合いながら、トータルで綾部の魅力を発信したり、価値創造をしていく。そのために私たちは考え、行動に移さなければならない。
 
綾部滞在の半日でラジオ出演、打ち合わせ、市長面談、そして新聞取材をこなし、ヘロヘロ。「組織の長」って、こういう忙しさや気疲れもあるんやろうなあ。

6年ぶりの卒業式

3月20日は、本務校の卒業式。前々任校でゼミ生を送り出したのが2015年の3月、前任校では文科省の補助事業推進のための特任教員であったのでゼミを持っていなかった。つまり、6年ぶりにゼミ生を送りだすことになった。
現在所属する学部に新設とともに着任。つまり1期生。学部として初めての卒業生である。
新しい学部。教員も、職員も、そして学生たちも一緒に学部を作り上げてきたような感じ。そして、「教える→学ぶ」の関係ではなく、お互いに、ともに学び合いながら今年、完成年度を迎えた。
この4年間を、「超私的」に振り返ってみたい。
 
2017年度
新設された京都産業大学現代社会学部に着任。教員生活としては3校目の勤務先となる。
これまで、「まちづくりが専門」として、学生たちとともに地域に入り、「地域から学ぶ」というスタンスで学生と、そして地域と接してきた。そのことから、「大学地域連携」の仕事が増え、前々任校では、大学が立地する京都府北部・兵庫県北部、そして前任校では、文科省の「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」の特任教員として対象とする地域である宇治市京都市伏見区を中心に、京都府南部のを駆け回った。
そういった思い入れや自負もあり、新天地でも「地域」にこだわった研究・教育・社会貢献をしていこうと思った。
新学部なので、全員が1回生、当然ゼミはまだ始まっていないので、ボチボチやろうと思っていたところ、大学の立地する近くの上賀茂学区が、大学と連携して「学区ビジョン」作るので、学生と一緒に手伝ってほしいという依頼を受け、地域のことを知るために町歩きをしたり、学区の人たちとワークショップを行ったり、ニュースレターを全戸配布したり、コミュニティラジオに出演して告知をしたりと、学区をくまなく駆け回った。おかげで学区内の道やどんなところなのかといったことが頭に入り、地域のイメージが明確になった。
エピソードとしては、最初の顔合わせで、大学院時代に知り合った元市職員の方との再会、夏祭りでの学生たちによるアンケート調査の最中で夕立に見舞われたことなど。でも、プロジェクトは継続することなく終了してしまった。
また、秋以降は、他学部の綾部市での合宿に学部学生も参加させてもらい、ゼミの宣伝ができたことがある。参加者のうち1名はゼミに参加してくれたし、上賀茂学区のプロジェクトで一緒に活動した学生もゼミに来てくれることになった。
 
2018年度
いよいよゼミスタート。フィールドは綾部市を中心とする京都府北部地域(とはいうものの活動エリアはほとんど綾部市内)。この年は水源の里老富がメインのフィールドとなった。綾部の「水源の里」の取り組みは前々任校時代に、前市長から話を伺っていたが、これらの集落が多く存在する、市東部の上林地区には行ったことがなかった(車を持ち出したのが任期後半になってからだったということもあり)。いわば初めての上林。しかも老富は市街地から35kmほど離れた最も遠い集落。最初に出向いた時、駅からタクシーを利用したら1万円を越えてしまい驚いた。
それでも、この頃から有名になったシャガの群生の際には集落の人たちが名物の栃もちでもてなしてくれたり、お土産品を並べたりと、集落をアピールするために努力されていることを知った。とりわけ、シャガの群生がある、森の中は常にきれいに整備され、荒れた道は全くない。この年の7月に起こった豪雨災害で崩れた山道を、ゼミの学生たちも混じり、集落の人、市職員とで直した。
8月にはインターゼミ。地域をフィールドとする4つの大学のゼミの合同合宿にこの年から合流。山形県庄内の美しい自然のなかで、学生たち、そして担当教員とが熱い学び合いを繰り広げた。
9月には初のゼミ合宿。インタビューをし、集落を歩き、地域の資源、課題について議論した。また農家民宿に泊まる体験もできた。
10月には、綾部市里山交流研修センターが、本務校の綾部における交流拠点に位置づけられ、その開所式に参加。学生たちは来賓の前で見事に発表を行った。
その後も、しばしば老富の集落を訪れ、調査。年度末には集落の紹介冊子を完成させた。
 
2019年度
2期生4人が入ってきた。人数としては少々寂しかったが、8月のインターゼミでは「ホーム」の綾部・福知山ということもあり、福知山公立大学とともにホスト校としての責務を果たせたこと、そしてゼミ生たちが見違えるような成長を見せたことが印象に残った。
この年に入った綾部市内の集落は水源の里・古屋。集落の人口がわずか4人(当時)、高齢化率100%という府内最小の集落だが、集落の人は元気である。村用や特産の栃の実拾いには、都市部から多くの人がボランティアで駆けつけ、地域住民と協働することで集落が維持されているというところである。
学生たちと初めて訪れた9月頃、この集落も試練の中にあったが、取材を続ける中で、学生たちの方から通ってさらに取材を続けたいという申し出があり、結局集落紹介冊子を作成するのに5回ほど訪れたのではないだろうか。
また、秋には地元高校生と「10年後の綾部を考える」というワークショップを行った。学生たちがテーブルファシリテーターとして、高校生たちと対話を行った。だが、そこで得られた感想はかなりシビアで、「表面的な意見しか出なかった」というものであった。その心は、「高校生たちが地元のことを知らず、興味もない。それが故に、高校を卒業した後、地元を離れたいと思う人が多い」という実情に大きなショックを受けていたということである。このことは、学生たちにとって、綾部を考える上で大きな問題意識として認識されることとなり、それがのちの研究発表や卒論につながるのである。
 
2020年度
2月頃から始まった、新型コロナウイルスの感染拡大は、この年のゼミ活動(というよりも大学生活そのもの)を大きく変えることとなった。
卒業式も入学式も中止となり、春学期は授業も全てオンラインに切り替えられた。ゼミも例外でなくオンラインとなり、zoomやteams、discordといったツールを使い、授業やゼミ、会議を行うこととなった。
新ゼミ生は、10人を数え、これまでにない人数の加入に期待も膨らんだが、結局春学期いっぱい、実際に会うことはできず、オンラインでのゼミ活動を重ねることになった。当然、フィールドワークも不可能となり、春学期、そして夏季休暇中のフィールドワークは全て中止となった。したがって、夏合宿もなく、恒例のインターゼミもオンラインで行うということになった。
対面でのゼミが始まったのは秋学期。例年ならば、合宿を経験して成長した姿を見ることができるのだが、10月も間近に迫った頃、ゼミ生同士が「初対面」となったのである。
フィールドワークが再開できたのは、10月の終わり。また2回生が行う集落紹介冊子作成のためのフィールドワークは11月も終わりになっていた。この年は水源の里・清水と橋上の里を担当することになったが、結局学生たちが足を運べたのは1〜2回に過ぎない。
それでも、3回生は昨年度の調査の結果を振り返り、大学コンソーシアム京都「京都から発信する政策研究交流大会」での研究発表を行い、4回生はそれぞれの関心や問題意識をもとに卒論や卒業研究を行った。
今年度は、確かにフィールドに出ることについては大きな制約が課せられたが、「深く考える、省察する」時間が与えられたのだろう。フィールドワークの基本を学ぶべき2回生にとっては気の毒であったが、上回生にとっては、こうしたプラスに働いた面もある。
 
以上、2017年に学部が新設されるとともに着任し、その年に入学した1期生の卒業を以て、完成年度を迎えるのであるが、「地域での学び・地域からの学び」の意味と面白さを学生たちに伝えられたであろうか。また、「地域での学び・地域からの学び」が彼らに何をもたらしたであろうか。検証はこれからである。
 
さて、2021年度の幕開けが間近に迫った。2020年同様、コロナ禍による様々な制約からは逃れられないと思うが、それでもこの1年の経験によって、「新たな生活様式」ならぬ「新たな学びや活動」への適応もできるようになった。
実は、年度明けから始めたい活動が満載である。新年度が待ち遠しい。