誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

最近読んだ本(2)

昨日に引き続いての最近読んだ本についての投稿。

蓑原敬・饗庭伸・姥浦道生・中島直人・野澤千絵・日埜直彦・藤村龍至・村上暁信著『これからの日本に都市計画は必要ですか』学芸出版社、2014年

都市計画家・蓑原敬氏と若手都市計画家である他の著者との「対話」というかたちをとっている。

2部構成であり、第1部は「講義編」、第2部は「演習編」となっており、「講義編」では、近代都市計画を概観しながら、ポスト近代、特に3.11以降の都市計画のあり方について考える内容となっている。また「演習編」では、若手都市計画それぞれからの「問い」に対し、簑原氏を中心に他の若手メンバーとともにその「問い」について議論する、というものである。

この本の特徴は、脚注が充実しているところである。だから、建築・都市計画についての知識が十分でなくても読み進めることができる。

この本を特徴付けているこの体裁、実は私自身大いに役立った。なぜならば、都市計画の分野で知っておかなければならないテクニカルタームや人物、著書について、「かじっただけ」ではあるものの、一通り学ぶことができたからである。

大学院の博士前期課程、後期課程とも「まちづくり」の研究室に入った、ということもあり、担当教員は共に都市計画が専門であった。

だが、実は両者から「都市計画とは何か」ということについて教わった記憶はない。両者とも「現場主義」「実践主義」を貫かれてきたこともあるが。

都市計画が工学系の学問であることは承知しているのだが、大学院では政策系の研究科に所属していたこともあり、結局「工学的な都市計画」に触れることなく現在に至っている。

それ以前に、自分自身「理系の素養がない」とこれまで思い込んできたところがある。「理系的な学問」をさけてきたようなところがあることも否めない。

それ故に、「都市計画」は自分と近いところにあるにもかかわらず、真正面から向き合ったこともなかった。

さて、大学院を修了し、教員の仕事を得たのが2009年。

赴任先は地方の大学である。

行政の委員会等では「学識経験者」の枠があるが、赴任早々、「都市計画系」の委員候補がやってきた、と手ぐすねを引いて待っていたのか、瞬く間に複数の「都市計画系」の委員を引き受けることになってしまった。

都市部にいるときはそれでも「ワークショップ」とか「まちづくりイベント」とか「社会実験」というかたちでなんとかやっていくことができたが、地方の自治体では都市計画のセクションは「土木・建設」の下に置かれていることが多く、その考え方や手法は「きわめて伝統的な都市計画」である。

だから、委員会で時には「座長」を務めたりしながらも、その椅子に「何ともいえない座り心地の悪さ」を感じていた。

そんなときに出会った本であったので、「表面だけ」ではあるけれども、一応都市計画の基礎知識を整理することができた。いやそれ以上に「やらなければいけないのだけれどやってこなかった」自分が、多少なりとも「都市計画」に向き合うきっかけを与えてくれた。

だが、本来の都市計画は単なる「技術」ではなく、生きている「まち」「地域」を相手にしながら、そこに住む人の幸福を追求したり、環境を良くしていくことで、人と自然あるいは景観の調和をはかったり、まちへの親しみや愛着を育んでいくためのものである。

つまり、本来都市計画は、工学的な「技術」ばかりでない、総合的な学であり、実践であり、文化であり、そして思想である。

そのことは逆に自分から地域に向けて発信していくべきなのだろう。