誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

クリエイティブ福知山

かつて「クリエイティブ綾部」という記事を投稿したことがある。

福知山赴任1ヶ月前に綾部に当時あった「扇屋懐估亭」に連れて行ってもらったときに感じた感想であり、また、赴任予定地であった福知山というまちに対して「図体ばかりでかいけど時代遅れで垢ぬけない奴」という印象を強く感じたものであった。

あれからおよそ1年。福知山にもクリエイティブな拠点ができつつある。昨年末にオープンしたスペース「green horn(グリーンホーン)」である。

"green horn"とは「青二才」という意味。福知山及び周辺市町の若手中堅のアーティスト、クリエーターたちが集まり、月1回ペースではあるが、これまで福知山にはなかったアートイベントが開かれるようになっている。

今日はそのイベントの初日(イベント詳細はこちら。また当日の様子はこちらこちらこちら)。関わっているメンバーの知人やその知人を中心に、市内および周辺市町の「クリエイティブクラス」というと大げさだが「感度の良い」人たちでにぎわっていた。

残念ながら建物が取り壊される今年の夏までの「期間限定スペース」であるが、私は大変関心を持っている。なぜならば、どちらかというと「お上頼り」、「お金ありき」という気質を持つこのまちにおいて、「自力で」立ち上げ、なおかつ「ほぼ自腹」で運営していることである。そこに、自分の意思で参加したメンバーたちが、意見を出し合い、力を合わせてスペースを作り、イベント盛り上げているのである。それゆえ、色々な意味でぜひ応援したいと思っている。


ここから下は理屈っぽいので読みたい人だけどうぞ。

このまちは、古くから地域の中核として、また交通の拠点として栄えてきた。そしてその栄光は人々の心に深く刻まれ、今なお「中心性」、「拠点性」を謳う。

かつては、周辺から多くの人が訪れ、商業が栄えた。中心市街地の商店街等は北近畿における「よそいきの場所」であったという。

しかし、時代は変わった。由良川の水運が鉄道の拠点になり、今はモータリゼーションによって幹線道路の時代へと移り変わった。そういう意味では今なお「交通の拠点」であることに変わりはなく、また、ここのまちの市民は、ほとんどの世帯で自家用車を所有し、その恩恵に浴している。

しかし、まちそのものの魅力がなければ、人は訪れない。それなくしては単なる「通過都市」であり「乗換駅」であるにすぎないし、実際にそうなりつつある。今でこそ、ロードサイドにある大型商業施設やアミューズメント施設が周辺の人を引き付けているという側面はあるが、そんなものはいずれ飽きられるし、そこでの営業に「うまみ」がなくなれば、撤退するのは明らかである。そして、そんな単純なことに気づいていない「偉い人」があまりにも多いのがこのまちだ。

だからこそ、中心市街地にはまちの人間の顔が見えるクリエイティブな場所が必要なのである。それはかつてジェイコブズも主張した。

確かに、「店舗」ではないから、そこで金は生み出さないであろう。しかし、魅力的な場所として認知され、人が訪れることによって、周辺の商店にも影響を及ぼすし、外からも注目される場所となる。そういう外部性を持っているのである。

「green horn」は、隣にあるカフェ「まぃまぃ堂」さんがもともと地元の人ばかりでなく、クリエイティブな人の「たまり場」になっていた(といっても開店して1年余りだが)こともあって、その相乗効果が出ていた。近くの人たちも面白がって見に来てくれていたし、そういう意味では大成功だと思う。

これからの課題は、こうしたクリエイティブな場所をいかに維持し、クリエイティブな人材を引き寄せる魅力を発信し続け、そのことによって周辺の商業者や住民に好影響を与えられるような仕掛けを作っていけるかだ。相変わらず「時代遅れ」の絵しか描けない「お上」をいかに説得し、協働マインドを持たせられるか。そのあたりも骨は折れるだろうが重要な課題だ。

フロリダも「起業家精神に点火するのは個人の問題だが、その熱や光を持続させるのは、より広範な社会の問題である」と述べている通り、市民、事業者、行政で今は小さいがクリエイティブな芽を大きく育てていかなければならない。そのように強く思う。