誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

久しぶりの伝統産業に触れる機会

 京都市指定有形文化財の京町家「長江家住宅」で27日まで開催されていた「SUGITASU & HYOBODO EXHIBITION」を見てきた。

 知人からfacebookで招待があり、あまり趣旨を理解せぬまま会場へと向かった。

実はこの「長江家住宅」の町内にある会社で以前勤めていたことがあるのだが、これまで中には入ったことがなかった。

 建物に入ると、フージャーズコーポレーションという不動産デベロッパーの所有になっていることに気づく。かつて理事を務めていたNPOが、オーナーの意向で京町家を失うことになった経験があるので、やはり個人所有ではもはや町家の所有・保存・再生は難しいのか、ということを痛感する。

 建物に上がらせていただくと、店の間には漆と友禅の作品展示。見知らぬ空間と久々の「呉服屋さん」の雰囲気に緊張しながら奥に入っていくと、知り合いが手伝いをしていた。

知り合いから、この展示会の趣旨やこの京町家を会場に選んだ理由、近況などをひとしきり聞かせていただいた。

 興味を持ったのは漆の作品。これまでの京漆器の「定番」ともいえる棗等の茶道具はもちろんだが、目を引いたのはワイングラス等のガラス製品に漆を施した作品。茶道具等の需要が減少する中で、新しいチャレンジをされていることだが、パーティー等でも映えそうな「色漆に蒔絵」とか「箔押し」「螺鈿」といった漆器の技術を活かしながらも、現代の生活にマッチしたしゃれた作品が多く、目を引いた。

 知り合いから作者を紹介していただき、話を聞く。

 今回は、新しい意欲作の展示だが、寺社や仏壇の修復も手がけているらしく、その仕事内容についてもご説明いただいた。知り合いとともに意見交換をする中で、現在の伝統産業の若手職人が置かれている状況や課題をうかがい知ることができた。

 思えば今からおよそ20年ほど前、当時所属していた和装業界で感じた問題点が原点となって研究活動、市民活動に入った自分だが、大学教員になり、日々の仕事に忙殺される中で、原点である伝統産業研究や活性化に係る活動からは遠ざかっていた。一方で、伝統産業の抱える課題に果敢に取り組む若者やNPOが出てきたこともあり、「もう自分の役割は終わったかな」とも思っていた。

 だが、意見交換をする中で、今の自分の本分である「文化政策研究」の中で、自分なりにできることはまだあるのではないか、と感じた今回の展示会訪問であった。