誠信堂徒然日記

まちづくり、地域のこと、旅行記、教育や社会問題等徒然と。

別府混浴温泉世界フィールドノート(後編)

9月4日(金)

2日目。朝9時頃、宿を出発する。前日チェックできていない場所や作品を見て回るのが目的である。

朝からひたすらまちあるき。まちの至る所にある古い建物、それはよく手入れされたものもあれば、不思議な物が置かれているものもある。そして空き家とおぼしき建物や更地となった場所から見える風景など、写真にどんどん収めていく。

「清島アパート」は、2009年の「混浴温泉世界」の国内展「わくわく混浴アパートメント」の会場。そしてその後、アートイン・レジデンスとしてアーティスト、クリエイターがここに住み、作品を別府に残している。建物内の見学は要予約なので今回は断念。

やはり、前日のアートゲートクルーズでの話であったように、別府は建物の入れ替わりが激しいのか。更地も目立つ。また、古い建物もすべて壊して、新しくするのではなく、なくなった所にまた違う建物が建っていく、という印象だ。その分、町並みには統一性がなく、「美しい景観」とはお世辞にも言いがたいが、多彩な顔を見せる。この雰囲気がアーティスト、クリエイターの感性を刺激するのかもしれない。

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境川まで出ると山の方向に「ラクテンチ」の文字。別府の遊園地・ラクテンチが見える。

この近くには、前日見ることができなかった大平由香理の壁画のある末広温泉がある。せっかくだし見ていくことにする。面白いのは入口に鍵がかかっており、「会員」は合鍵をもっていて、それであけて入るという方法だ。ところが「会員以外」の人も扉の横にぶら下がっている「合鍵」で入れる。つまり、誰でも入浴可能なのである。

入ろうとすると、この末広温泉の主人(?)が来られたので、壁画のことについて話を聞いてみる。聞く所によると大平さんは「清島アパート」に住みながら、作品を仕上げたとのこと。6月頃から、壁画を描くのに、男湯に足場を組んで絵を描き、今度は女湯に足場を組んで絵を描くという方法で、休業にせずに作品を仕上げたとのことである。

主人は、アートプロジェクトへ参加を決めた動機として、絵画が好きだとのこと。最初は半信半疑であった入浴に来る人からの評判も、出来上がってみると上々とのことだ。

せっかくなので、お風呂に入っていけというので、「写真を撮りにきただけ」と断ったが、実は営業中であることに気付く。慌てて入浴していくことに決めた(実は朝、宿の温泉に入ったばかりであったが)。湯船につかるとちょうど目の高さからの壁画の眺めがよく、入って正解であった。入湯記念に大平由香理さんからの壁画完成披露会記念品を主人からいただく。

ちなみに男湯は鶴見岳、女湯は由布岳を描いたのだという。女湯の壁画も見たかったが、さすがに断念する。

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さらに歩いて、前日途中までしか見ることのできなかったデパート「トキハ別府店」に向かう。途中、もう一つ作品のある松原温泉にも行きたかったが、こちらは作品である音楽演奏が00分スタートであるため、時間が合わず。次回に期待しよう。

前日通った楠銀天街のほか、中浜筋付近をうろうろ。やはり更地をあちこちで目にする。ところが、一歩表通りにでると、眼前には国道10号線。通りに面して「ゆめタウン別府」というショッピングモール。同じまちの中に別の世界があるようである。

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かなり寄り道をしたが、トキハ別府店に到着。浅井裕介作品の屋上絵を見るのが主な目的であったが、「トキハ天空混浴劇場」と銘打った竹や廃材等でつくった舞台も興味深かった。また、屋上から見ることのできる「別府タワー」との対比も面白い。別府タワーからこの屋上絵を見ることはできるのだろうか、とふと思う。

その後、前日見なかった作品を見る。空きテナントの展示ブース(?)は二つあった。同じフロアには普通に営業している飲食店もある。別府の中心地の百貨店にある空きテナント。そこをアートで埋め尽くすのも面白い試み。ビルオーナー目線で見れば採算はとれないと思うが。

この空きテナントのテーブル席にある『別府新聞』という模造紙にひたすら別府で見たことや考えたことを書き連ねた“新聞”に書かれている内容が面白く、じっと見ていると、そこに着ぐるみを来た人のほか数名がやってきた。その先には小上がり席があり、そこにはちゃぶ台やレコードプレーヤーといった昔の家具や音響機器類がおかれている。着ぐるみを着た人の名は「カッパ師匠」。なんとこのちゃぶ台の上でお茶を振る舞ってくれるという。電磁調理器の上に鉄瓶をのせて湯を沸かし、その湯を冷ましながら、丁寧に煎茶を出してくれた。確かにおいしい。そして何となく雑談が始まり、サインまでもらってしまう。そのゆるい雰囲気で話す光景が面白く、ついつい長居をし、昼過ぎまでいてしまった。

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今日は帰る日なので、いつまでも長逗留することもできないため、失礼して次の目的地に向かう。どこへ行こうか。そういえば屋上絵から見えた別府タワーが気になった。前日歩いた時も「登録有形文化財」というレリーフが気になった。天気も良いし、別府タワーに行ってみることにする。まちを鳥瞰することもできるだろう。

別府タワーはトキハ別府店からはすぐ。入館料はわずか200円!エレベーターで展望室に上がる。完成年は1957年。名古屋のテレビ塔、大阪の通天閣に次いで古い塔で、東京タワーよりも古い。名古屋や大阪のような大都市でないこの別府でこのような早い時期に、近代化の象徴とも言うべき塔が建てられたというのも当時の別府人にとっては誇りであったと思うし、それだけにぎわったのだろう。

展望室はとても「昭和な雰囲気」。京都タワーの展望台とも似た雰囲気がある。そして、東側には海、西側には別府の市街地、そして山々が望める。

別府タワーを出て駅方面に向かって駅の北側を歩く。駅の北側は前日もあまり歩かなかった。ここにも温泉銭湯を中心とした生活空間が広がっている。飲み屋は少ない感じか。

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日豊本線の高架下までやってきた。前日は駅の南側に延びている「べっぷ駅市場」を通ったが、今日は「北高架商店街」と書かれた商店街を通る。壁や柱にはアーティストによる絵が描かれ通りにもオブジェや照明が吊るされていたり、ちょっとおしゃれなカフェがあったりと、「べっぷ駅市場」とは全く違う雰囲気。事前にウェブサイトでこの「北高架商店街」についてちらっとチェックしていたと思ったが、やはりここのことであった。今回は時間の関係でゆっくり見たり、店に入ったり、話を聞いたりすることはできなかったが、次回はぜひゆっくり見て回りたいエリアである。

駅で予約していた列車のチケットを受け取り、昼食へ。老舗の洋食屋(なんと開業当初は中華料理店であったため今でも中華のメニューがある)でステーキ定食をいただき、前日気になっていた洋菓子店「ニュードラゴン」でロールケーキ「ドラゴンロール」を土産に購入。保冷剤を入れてもらったが、京都までもつかどうかヒヤヒヤしながら、駅へ向かう。14:20別府駅発の列車で別府を離れた。

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