多世代交流と成長
綾部市を舞台に開催された、7月27日の「長〜い流しそうめん&盆踊り大会」、8月2・3日の「綾部こども探偵」に学生と共に参加したので、そのレポート。
「長〜い流しそうめん&盆踊り大会
理事長を務めるNPO法人里山ねっと・あやべ主催事業。今年4月に新施設が竣工し、初の大型イベントとなった。
里山ねっと・あやべは、都市農村交流や移住定住に向けた情報提供などについては20年以上の実績があるが、反面、施設が立地する地元とのコミュニケーションという点においては十分とは言えなかった。
今回は、事務局長の発案により、「地元の人たちが楽しめるイベント」というコンセプトのもと実施したのがこちら。
流しそうめんは、森林ボランティアの方々に竹の伐採をお願いし、それを使い落差3.5m、長さ35mの樋を作って、流しそうめんを流した。うだるような暑さの中、ゼミ生2名がそうめん流しに携わったり、夏休みに入った時期ということもあり、子どもたちとさまざまな遊びの相手をしたりした。
夕方からは、盆踊り大会。それに先立ち、地元で踊られてきた福知山音頭、綾部踊りのレクチャーを地元保存会の皆さんにしていただいた後、庭に設置された櫓の周りで盆踊り。私が四苦八苦する中、学生たちはメキメキ上達していく。やはり身体の動きとリズム感が違うのだろう。
「綾部こども探偵」
8月2・3日は綾部市と滋野ゼミとの協働事業である「綾部こども探偵」を実施。
「綾部こども探偵」は、地元の小学生たちが「探偵」となって、綾部の木になるところを「調査」し、それをもとに「報告をまとめ、発表する」という企画。それをサポートする学生は「助手」という役割である。
この事業は前年度に「綾部市の情報発信」について研究する学生2名と市の広報セクションの職員の方とを、コロナ禍のなか、オンラインで意見交換をしてきた中で生まれた事業。「情報発信」を議論する中で、「地元の子供達からの情報発信ならば、大人も見るだろう」と考え、子どもたちの綾部の情報発信を、市の広報誌に掲載しようという中で誕生したのが発端。
昨年度は学生2名、子どもたちも5名程度と少なかったものの、子どもたちにとっても学生にとっても、そして市にとっても意義ある事業となったため、「定例化していこう」ということに。
しかし今年度は、当時の背景を全く知らない学生が事業を担当する。当然当初はモチベーションも上がらないままであった。
しかし、イベント広報を、地元のコミュニティFMでさせてもらったのを皮切りに、徐々に担当メンバーが集まり出した。それでも「何をすればよいかわからない」「(訪綾の回数が少ないこともあり)綾部のことをよく知らない」学生たちが担当することについての一抹の不安はあった。
そこで、「子どもたちも、学生たちも共に学ぶ」という方針で進めることにした。
今年度は「探偵(小学生)」9名、「助手(大学生)」8名という、昨年よりも多いメンバーが集まった。
各訪問先では、「探偵(小学生)と助手(大学生)」が、良いコミュニケーションを取れており、当初の心配は杞憂となった。中には、ある学生をとても頼ってくれる小学生もいたりして、学生たちもまんざらではない様子。
2日目は、初日の訪問先のメモをもとに「調査報告書」を作成し、発表するするのだが、この「報告書」が、そのまま夏休みの自由研究にも使えるというものにした。昨年度は模造紙にグループで「壁新聞」のように作ったので、持って帰ってもらうことができなかったという課題を踏まえ、今回はA3サイズの紙に文章と写真やイラストを入れ、一人一人が作成するというもの。これが功を奏し、小学生たちは自分のペースで仕上げることができるし、学生もほぼマンツーマンに近い形で、作成のアドバイスを行なっていた。
ここでも、特に詳細な指導はしていないのだが、ヒントを出したり、書き方へのアドバイスをするなど、自分たちなりに工夫して小学生に伝えている姿を目にすることができた。
両事業を終えて
今回、「長〜い流しそうめん&盆踊り大会」「綾部こども探偵」に参加、実施してみて思ったのが、やはり、日常と異なる人たちとの交流や協働作業は学生の成長を促すということ。
前者では、流しそうめんや遊びに来た近くの子どもたちばかりでなく、踊りを教えにこられた方や、地域住民の方、NPOの事務局の方とのコミュニケーションが、そして後者では、2日間、子どもたちと学生とがほぼマンツーマン、「ガチで」接するという経験を通じて、ずいぶん成長したように思う。
また、地元から見ても、高校を卒業し、進学や就職のため、多くの人が出ていってしまうため、20歳前後の若者の数が極端に少ないということもあり、小学生から見れば「お兄さんお姉さんのような」、地域の高齢者の方から見れば「孫のような」世代と接することは良い刺激になるのではないかと考えている。
親や先生といった「タテの関係」、友だちといった「ヨコの関係」だけでなく、「ちょっと年上、家族親族ではない若者」といった「ナナメの関係」ができることで、良い刺激になっている。
一方の学生にとっても、日常生活での人間関係はそんなに広いわけではない。そんな時、普段とは違った年代、属性の人たちとの交流は、自分の視野を広げ、異なる価値観を接する絶好の機会なのだと思う。
毎年、学生たちが「合宿で一皮剥ける」と感じているが、9月に実施する5大学の合同合宿「インターゼミ」でさらに「一皮剥ける」のが楽しみである。
多世代交流と成長
綾部市を舞台に開催された、7月27日の「長〜い流しそうめん&盆踊り大会」、8月2・3日の「綾部こども探偵」に学生と共に参加したので、そのレポート。
「長〜い流しそうめん&盆踊り大会
理事長を務めるNPO法人里山ねっと・あやべ主催事業。今年4月に新施設が竣工し、初の大型イベントとなった。
里山ねっと・あやべは、都市農村交流や移住定住に向けた情報提供などについては20年以上の実績があるが、反面、施設が立地する地元とのコミュニケーションという点においては十分とは言えなかった。
今回は、事務局長の発案により、「地元の人たちが楽しめるイベント」というコンセプトのもと実施したのがこちら。
流しそうめんは、森林ボランティアの方々に竹の伐採をお願いし、それを使い落差3.5m、長さ35mの樋を作って、流しそうめんを流した。うだるような暑さの中、ゼミ生2名がそうめん流しに携わったり、夏休みに入った時期ということもあり、子どもたちとさまざまな遊びの相手をしたりした。
夕方からは、盆踊り大会。それに先立ち、地元で踊られてきた福知山音頭、綾部踊りのレクチャーを地元保存会の皆さんにしていただいた後、庭に設置された櫓の周りで盆踊り。私が四苦八苦する中、学生たちはメキメキ上達していく。やはり身体の動きとリズム感が違うのだろう。
「綾部こども探偵」
8月2・3日は綾部市と滋野ゼミとの協働事業である「綾部こども探偵」を実施。
「綾部こども探偵」は、地元の小学生たちが「探偵」となって、綾部の木になるところを「調査」し、それをもとに「報告をまとめ、発表する」という企画。それをサポートする学生は「助手」という役割である。
この事業は前年度に「綾部市の情報発信」について研究する学生2名と市の広報セクションの職員の方とを、コロナ禍のなか、オンラインで意見交換をしてきた中で生まれた事業。「情報発信」を議論する中で、「地元の子供達からの情報発信ならば、大人も見るだろう」と考え、子どもたちの綾部の情報発信を、市の広報誌に掲載しようという中で誕生したのが発端。
昨年度は学生2名、子どもたちも5名程度と少なかったものの、子どもたちにとっても学生にとっても、そして市にとっても意義ある事業となったため、「定例化していこう」ということに。
しかし今年度は、当時の背景を全く知らない学生が事業を担当する。当然当初はモチベーションも上がらないままであった。
しかし、イベント広報を、地元のコミュニティFMでさせてもらったのを皮切りに、徐々に担当メンバーが集まり出した。それでも「何をすればよいかわからない」「(訪綾の回数が少ないこともあり)綾部のことをよく知らない」学生たちが担当することについての一抹の不安はあった。
そこで、「子どもたちも、学生たちも共に学ぶ」という方針で進めることにした。
今年度は「探偵(小学生)」9名、「助手(大学生)」8名という、昨年よりも多いメンバーが集まった。
各訪問先では、「探偵(小学生)と助手(大学生)」が、良いコミュニケーションを取れており、当初の心配は杞憂となった。中には、ある学生をとても頼ってくれる小学生もいたりして、学生たちもまんざらではない様子。
2日目は、初日の訪問先のメモをもとに「調査報告書」を作成し、発表するするのだが、この「報告書」が、そのまま夏休みの自由研究にも使えるというものにした。昨年度は模造紙にグループで「壁新聞」のように作ったので、持って帰ってもらうことができなかったという課題を踏まえ、今回はA3サイズの紙に文章と写真やイラストを入れ、一人一人が作成するというもの。これが功を奏し、小学生たちは自分のペースで仕上げることができるし、学生もほぼマンツーマンに近い形で、作成のアドバイスを行なっていた。
ここでも、特に詳細な指導はしていないのだが、ヒントを出したり、書き方へのアドバイスをするなど、自分たちなりに工夫して小学生に伝えている姿を目にすることができた。
両事業を終えて
今回、「長〜い流しそうめん&盆踊り大会」「綾部こども探偵」に参加、実施してみて思ったのが、やはり、日常と異なる人たちとの交流や協働作業は学生の成長を促すということ。
前者では、流しそうめんや遊びに来た近くの子どもたちばかりでなく、踊りを教えにこられた方や、地域住民の方、NPOの事務局の方とのコミュニケーションが、そして後者では、2日間、子どもたちと学生とがほぼマンツーマン、「ガチで」接するという経験を通じて、ずいぶん成長したように思う。
また、地元から見ても、高校を卒業し、進学や就職のため、多くの人が出ていってしまうため、20歳前後の若者の数が極端に少ないということもあり、小学生から見れば「お兄さんお姉さんのような」、地域の高齢者の方から見れば「孫のような」世代と接することは良い刺激になるのではないかと考えている。
親や先生といった「タテの関係」、友だちといった「ヨコの関係」だけでなく、「ちょっと年上、家族親族ではない若者」といった「ナナメの関係」ができることで、良い刺激になっている。
一方の学生にとっても、日常生活での人間関係はそんなに広いわけではない。そんな時、普段とは違った年代、属性の人たちとの交流は、自分の視野を広げ、異なる価値観を接する絶好の機会なのだと思う。
毎年、学生たちが「合宿で一皮剥ける」と感じているが、9月に実施する5大学の合同合宿「インターゼミ」でさらに「一皮剥ける」のが楽しみである。
1月27日開催!「あやべ田舎生活実践塾」参加者募集中
ゼミ生が担当しているイベント。「あやべ田舎生活実践塾」。
なかなか、参加者集めに苦労しているようです。
今回は、山崎善也綾部市長と株式会社 ワードスプリング 蒲田正樹さん(『驚きの地方創生「京都・あやべスタイル」』(扶桑社新書)著者)の対談。
会場は京都市役所そばの「京都ペレット町家ヒノコ」内のあやべ定住サポート京都サテライト店(京都ペレット町家ヒノコ内)です。
詳細・申込みは下記URLから。
https://ijurikkoku.com/2023/01/23/2023-1-27/
綾部は、わりと早い時期から移住促進を進めたり、限界集落を「水源の里」と呼び、その地域の活性化に取り組むなど、先進的な政策を進めてきました。
しかし今、全国の地域で「移住定住」や「関係人口の呼び込み」が進んできた結果、移住検討先の「ワンノブゼム」でしかないのかもしれません。
それでも、綾部には人を惹きつける「何か」があると考えています。私はその一つに「人の魅力」があると思います。それが「人が人を呼ぶ」ような移住につながっているのでしょう。
そんな綾部市の行政トップとメディアの一翼を担う方との対談は、単なる「移住良いよ」「田舎暮らし良いよ」にとどまらないお話になるのではないでしょうか。
2023年 元日新聞くらべ読み
今年もやります。「元日新聞くらべ読み」。
あやべ市民新聞
購読を初めて2年目になる。新聞を取り巻く環境は厳しいが、いつも地域に根ざした記事を提供してくれる同紙。
面白い(というか「特ダネ」かも)のが「かつて山家(やまが)に「芝居小屋」があった」という記事。江戸時代から同地域には芝居小屋があったという歴史を、地元の歴史の会が発掘を進めているらしい。現在は過疎化が進むこの地域になぜ芝居小屋があったのかというと、かつてここは街道筋で、明治末期まではここで渡し舟を使って由良川を渡る必要があったらしいが、大水が出ると旅人は逗留を強いられたとのこと。そのために芝居小屋が置かれたのではないかという見立て。
私の専門は(実は)地域文化政策だが、人口減少や高齢化により、文化を享受できる環境が地域から失われてきており、そのことから、人々の創造性涵養においても地域間格差がもたらされていると考えているが、こうした動きが、ささやかであってもそれを解決する一助になればと思う。
今春、いよいよ文化庁が京都にやってくる。それにあわせ、知事、市長、文化庁長官の鼎談が見開きで掲載。あまり深い内容ではないが。また、人口流出や財政難に悩む京都市を含め、府、京都市、滋賀県政23年の展望はタイムリー。
あと、社説「この地に足をつけて、歩もう」は、国の「地方創生」政策の負の側面を総括しながら、ローカリズムの価値を説く。文化庁の京都移転、統一地方選も今春。京滋は「行政の年」になるのかも。
経済では、永守重信日本電産CEOのインタビュー。前年、後継者問題等で何かと話題を振り撒いた同氏だが、ここで述べられているような見通しはどう出るか。
目を引いたのは、「下京の会津小鉄会元本部跡地を任天堂創業家が取得」という記事。芸術家らの創作拠点などとして整備するらしい。前年、旧本社をホテルに改修するというニュースがあったが、ここはその創業の地にも近い。最近、旧五条楽園にある建物等がゲストハウスや銭湯などに改修され、注目されているが、この地は併せて「市民活動・まちづくりの拠点」でもある。地域にどんな変化をもたらすか。
年始の特集が「「平和国家」はどこへ」、そして社説が「危機化の民主主義 再生へ市民の力を集めたい」。昨年起こったロシアのウクライナ侵攻、「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平中国国家主席と「台湾有事」への脅威・・・歴史を紐解けばそういう考え方や行動が出てくることは驚くことではないが、現代的な価値観から見れば、「専制主義」の台頭が世界を覆う不安は増すばかり。そうした中で、日本政府も安全保障政策の大転換へと舵を切った。
社説では、そうした民主主義の危機に通底しているのは人々の不満と不安であると論じる。
その解決に「地方の取り組み」に期待しているのは興味深い。地方自治は、住民に最も近い民主主義である。社説では、国内外の事例や、トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』を引きながら、地方自治の重要性を説く。統一地方選を控えて、という論調ではあるが、住民一人ひとりが「地域の担い手」として政治や地域の運営に関わるなかで、民主主義を育てていくことが、実は「専制主義」に対抗する手段になるのかもしれない。
年始の特集は「ともしび わたしのよりどころ」。ノーベル賞作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさんのインタビュー記事。1、2面のインタビューと社説とをあわせ、人間がなお戦争を引き起こし、そのことで人間性を揺るがす愚かしさをあぶり出している。そしてその解決のための構想の必要性を論じている。
面白かったのは11面の「「覚悟」の時代に」という1面全てを使ったオピニオン記事。方や「若者代表」として国際NGOアース・ガーディアンズ・ジャパン代表の川崎レナさん、方や「高齢者代表」の宗教学者・山折哲雄先生。「大人もこともも同じチームにいる」「議論には心理的な安全性が必要だと思う」といった、川崎さんの若い感性は”刺さる”。一方、山折先生の意見は、「命」に関する長い時間と深い思考によって”練られた”言葉が目をひく。
地方欄(京都)の「ぐるっと「食」見聞録」「関西のナゾ 京都タワー」は知っていることも知らなかったことも含め、純粋に楽しめた。
こちらも、新春特集のテーマは「分断」。だが、「グローバリゼーション」について全面的に焦点を当てているのが前出の紙面と異なる。確かに、ロシアのウクライナ侵攻、中国の大国化と覇権主義が世界に与えた影響は大きい。1面トップの見出しが「グローバル化止まらない」となっているが、好むこの混ざるに関わらず、私たちはグローバル社会の中におり、その中で翻弄もされ、かつチャンスも手にする。それは国際社会であれ、都市であれ地方であれ同じである。
面白かったのが「打ち破れ2023」。今は「不確実性の時代」と言われるが、そんな中、過去のしがらみや常識を捨てて未踏の地を切り開く各分野のキーパーソンに焦点を当てた記事。政治であれビジネスであれ学術であれ、社会を動かすのは「人」である。そして彼ら/彼女らは、直面する課題に挑み、道を切り開いているのである。
年初のテーマは「民主主義の形」。ロシアや中国をはじめとする「権威主義」の国が台頭する一方、民主主義の国や地域は後退し、今や権威主義と民主主義の国とがほぼ拮抗している。産経の主張では、こうしたさまざまな問題に立ち向かうのは「国家」が主語である。
面白かったのは、岸田首相と歴史学者・磯田道史さんとの新春対談。首相が自らが成し遂げた政策について「自画自賛」する一方で、磯田氏は、歴史と共に戦争の仕方が変わるなか、防衛の形が変わる、変わらざるを得ないことは認めた上で、今やコロナ禍のようなウイルスや気候変動など世界が「手を携えていかなければならない」問題だらけの現在、ロシアのウクライナ侵攻を引きながら、戦争の愚を案じている。
それは、後半の徳川家康の人物評にもつながる。磯田氏曰く、家康は「多様性を認めたリーダー」だという。家康は無理をしない、「分配と棲み分け」、多様な考えを認める政治を行い、天下泰平の徳川時代が続くことになったという指摘は興味深い。
1面には特段新春の特集記事はないが、新春名物の「大きな社説」は健在。今年1回目の題は「平和な世界構築の先頭に立て 防衛、外交、道義の力を高めよう」である。産経同様、問題に立ち向かう主語は「国家」であるのは産経と同じ。
岸田首相のインタビュー記事と同じ面にあり、目立たない記事だが「地域おこし協力隊 経験者活用 「協力隊」ネットワーク化へ」という記事に目が行った。2026年に現役隊員を1万人とする目標に向け、隊員の活動支援や相互の連携強化、また協力隊のOB・OGのネットワーク化によって、現役隊員との情報交換やノウハウの共有を図っていくという内容。
京都欄には、文化庁の京都移転に合わせ、妙心寺塔頭・退蔵院のお抱え絵師となった村林由貴さんの記事の全編。プロジェクトに選ばれ、住み込みで修行をしながら向き合った過程の記録。後編が楽しみ。
ロシアのウクライナ侵攻、「台湾有事」への恐怖、続く円安、待ったなしの気候変動対策・・・といった情勢を踏まえ、いずれも「分断を乗り越える」「不確実性の社会を生きる」といった論調が目立ったが、その主語や論調はやはり微妙に異なる。
一方、今年の京都の最大のトピックは文化庁の京都移転であろう。それに関連した記事も数多く目にした。
2022年元日新聞比べ読み
遅ればせながら、今年も元日の新聞を読み比べました。
ただ、元日付産経新聞だけが手に入らなかったので、ネット記事も引用しながらの講評になるのと、昨年から購読し始めたローカル紙『あやべ市民新聞』を加えて、2022年の元日新聞比べ読み!
新年の連載記事は「未来のデザイン」。1日付はDREAMS COME TRUEと「未来予想図」。連載の意図として、「コロナ禍の2年間は、先の見えない不安に誰もが慄いた時間でもあった。未来はこれまでの延長線上にはないかもしれない。だからこそ探りたい。より良い未来、そのすがたを」とある。続きの2面に目を移すと、西粟倉村の「百年の森林構想」を皮切りに、過去の感染症の流行が歴史を変えてきたこと、そして未来人の立場に立って現役世代が何をすべきかという「フューチャーデザイン」という取り組みが生まれているという紹介につながる。1日付の記事では「未来の社会をデザインしていくのは、私たち自身だ」とあるが、現代人はどうしても「今」だけに目が行きがちで、過去から学ぶことも、未来を想像することもなかなかできない。私たちはどうするべきか。
あと、社会面の「住まいのかたち」は個人的に興味あり。
読売新聞
元日お馴染みの3面の半分以上を使う社説がどうしても目に入ってしまう。タイトルは「災厄越えの一歩を踏み出そう」。金融資本主義の行き詰まり、中国の軍事大国化、そしてコロナ禍という、日本を取り巻く大きな変化、試練の中、「給付から雇用へ」「イノベーション」「緊張高まるアジアの最前線に立つ日本」という課題に立ち向かわなければならない。だから参院選で「政権与党頑張れ」という結論へと結びつく。問題認識は正しいのだが、論調が昭和。そして毎年のことだが、大言壮語なんだよなあ。
あと、5面の安倍元首相のロングインタビュー。「読売大好き安倍さん」だからこそのロングインタビューというのは勘ぐりすぎ?
トップが「ヤフコメ 露が改ざん工作」。ロシアの政府系メディアがヤフーニュースの読者コメント欄をロシア語に翻訳する際に、元の投稿文章を改ざん、加筆した疑いがあるという内容。毎日の元日付は時折、他紙が目をつけなかった記事を入れてくることがある。
社説は「民主主義と市民社会 つなぎ合う力が試される」というテーマ。安倍菅両政権下で異論を排除する動きが強まり、国民の分断が強まったという問題意識から、対話と参加という、本来の民主政治とそれを補完する市民参加の重要性を改めて問うている。
面白かったのは京都と滋賀の対決いろいろ(雑煮とかソウルフードとか駅名とか歌とか)。
冒頭でも述べたとおり、元日付のものが手に入らなかったので、3日付のものも参照にしつつ。
新年の連載記事「
」が少し気になる(ネット版は有料記事)。
1日付がAI、3日付がウイルスについて書かれている。2030年という「近未来」に向けて、文明史的な考察は興味深いが、タイトルの「主権回復」というのが少々仰々しい(3日記事ではパンデミックと私権の制限、そして憲法改正について言及があった)。
また、3日付の産経抄は1日に亡くなった池明観(チ・ミョングヮン)氏をしのぶ内容。そのスタンスはさておき、産経の韓国ウォッチはなかなか面白いことがある。ただ、3月の大統領選を控え、他国の与党の政策や姿勢をくさすのはどうかなあ。
昨年から続く連載「つなぐOurVoices 性を考える」は、「均等法『第一世代』」。男女雇用機会均等法施行直後に入社した女性社員が、様々な苦労を重ねながら現在があることが綴られている。1986年に男女雇用機会均等法が施行された頃はまさにバブル時代。「24時間戦う」ことが美徳とされた時代に社会人となり、社会でも企業でも「男尊女卑」の風潮がまだまだ根強かった当時、「次世代のために」と踏ん張り、今があることが綴られている。
21、22面では、「戦後のジェンダーの歩み」と題された、戦後のジェンダーに関するデータ紹介、また39面では、今なお、出産を機に仕事を辞めざるを得なかった女性たちの声が集められている。
私は、育った時代、家庭の環境もあってか、(「家事を女性任せにする」という選択肢はなかったものの)、「男が稼いで一家を支えるべき」という「性別役割分業」的価値観がなくもなかった。だが、家族ができ、家事育児と仕事との両立に悩み、また現在の職場で社会学に触れる中で、そうした考えは「一掃されて」いる。そういう意味もあり、この連載、大変興味深い内容となっている。
新年の連載記事のテーマは「成長の未来図」。見出しは「資本主義 創り直す」とある。日本は成長、格差、幸福度のいずれも他国と見劣りすることをデータで示しながら、成長力が伸びず、格差が拡大し、人々の幸福度も低い日本の現状を「第3の危機」を位置付け、北欧に見られるような、柔軟な労働市場と手厚い失業給付、実践的な公的職業訓練を組み合わせた雇用政策「フレキシキュリティー」にその解を求めている。
また、「岐路2022」として、参院選の行方、米中間選挙、中国の習近平体制、withコロナ、グリーン金融、DX、男性の育休取得など、今年の行方を占っている。
やはり、「経済ありき」なのは日経だが、それでも、戦後の高度経済成長からバブル期までを牽引した「日本型」は完全に行き詰まり、次の経済、社会の形について問い出したのは、これまでどことなく「成長路線上の未来像」しか描けなかった日経としては特筆すべきだろう。
あやべ市民新聞
昨年から購読しているローカル紙。1日付は通常の5倍近いボリューム。トップの念頭所感は「綾部の底力」として、人口減少に歯止めがかからない中、定住促進や避けて通れない国際化に対し、「グンゼ、日東精工、大本をうんだ綾部ならではの底力を信じている」と締めくくっている。
全体的に、2年にわたるコロナ禍はいまだ続くものの、ワクチンや飲み薬の開発といった「アフターコロナ」が見えてきた中で、そして2030年(SDGsのターゲットイヤーでもある)が見えてくる中で、来るべき社会を見据え、それに対して、私たちはいかにあるべきか、何をなすべきかという論調が目立った。
コロナ禍によって、未来への変化の速度が早まった、という見方も多いが、そうした中、先送りできない課題、経済、環境、ジェンダーバランス、デジタル化など、大きく立ち遅れたしまった日本の立ち位置について、もう待ったなし、という問題意識、危機意識が出ていると言えようか。